1 寄生虫
寄生虫とは、人や動物の表面や体内にとりついて、栄養を受けとりながら生活する動物のことであり、単細胞生物の原虫と多細胞生物の蠕虫に分類される。
ヒトに寄生する原虫には、マラリア、トキソプラズマ、赤痢アメーバ、トリコモナス、クリプトスポリジウムなどが存在する。
2 抗原虫薬
抗原虫薬には、マラリア感染症に用いられる抗マラリア薬(キニーネ、メフロキン、アトバコン・プログアニル配合剤、プリマキンなど)やトリコモナス感染症に用いられるメトロニダゾール、チニダゾールなどが存在する。
1)抗マラリア薬
抗マラリア薬 | 主な作用 |
キニーネ メフロキン |
赤血球内の分裂体の増殖を抑制する |
アトバコン・プログアニル配合剤 | アトバコン:電子伝達系を阻害し、ATP産生を抑制する
プログアニル:ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害する |
プリマキン | 肝細胞内の休眠体に対して殺虫作用を示す |
2)抗マラリア薬以外
① メトロニダゾール ② チニダゾール
・原虫や嫌気性菌が有する還元酵素によりニトロ基が還元され活性型となる。
・活性型が生成する際に、フリーラジカルが発生し、DNAが切断されることにより殺菌作用を示す。
◇適応症◇
メトロニダゾール
トリコモナス症、嫌気性菌感染症、感染性腸炎、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌、アメーバ赤痢 など
チニダゾール
トリコモナス症
2 抗蠕虫薬
抗蠕虫薬には、抗線虫薬(ピランテル、サントニン、メベンダゾール、ジエチルカルバマジン、イベルメクチン)、抗吸虫薬(プラジカルテン)、抗条虫薬(アルベンダゾール)がある。
1)抗線虫薬
① サントニン
・回虫の駆虫に用いられる。
・回虫の糖代謝、リン酸代謝、生体内酸化反応を阻害することにより運動性を消失させ、腸管の蠕動運動により排出させる。
・ヒマシ油と併用することによりサントニンの吸収が促進され、サントニンの中毒症状(感覚異常、頭痛、悪心など)が現れることがあるため、両剤は併用禁忌とされている。
② メベンダドール
・鞭虫症に用いられる。
・線虫のチュブリンと結合し、微小管形成を阻害することで線虫の運動性の消失させるとともに細胞分裂の停止などを起こすことにより線虫を死滅させる。
・グルコースの取り込みを阻害し、エネルギーを不足させることで線虫を死滅させる。
・催奇形性を示すため、妊婦には投与することができない(妊婦に禁忌)。
③ イベルメクチン
・腸管糞線虫症、疥癬に用いられる。
・無脊椎動物の神経・筋細胞に存在するグルタミン酸作動性クロライドチャネルに結合し、クロライドに対する細胞膜透過性を上昇させ、神経または筋細胞を過分極状態にすることで寄生虫を麻痺させ、駆虫活性を発揮する。
2)抗条虫薬
① アルベンダゾール
・包虫症に用いられる。
・チュブリンと結合し、微小管形成を阻害することで運動性の消失させるとともに細胞分裂の停止などを引き起こす。
・フマル酸還元酵素阻害作用を有する。