薬剤師国家試験出題項目

単純拡散、促進拡散、能動輸送、膜動輸送

細胞膜の基本構造は、主にリン脂質からなる脂質二重層により構成されている。脂質二重層には多様なタンパク質が埋め込まれており、タンパク質、脂質ともに流動性をもってるため、このモデルを流動モザイクモデルという。
生体膜透過とは、脂質二重層を透過する過程のことであり、薬物動態(吸収、分布、排泄)を考える上で重要な因子となる。低分子化合物の生体膜透過は、担体(脂質二重層に組み込まれたタンパク質)を利用しない単純拡散と担体を利用する担体介在輸送(促進拡散、能動輸送)に分けられる。また、タンパク質の高分子化合物は、膜動輸送により生体膜を透過する。

1 単純拡散と担体介在性輸送

単純拡散では、薬物は生体膜に溶解し、担体を利用することなく、膜透過する。

担体介在輸送では、トランスポーター(生体膜に組み込まれたタンパク質)が薬物分子を基質として認識し膜透過を促進する。

単純拡散と担体介在輸送の大きな違いは、特異的タンパク質が輸送に関わるかどうかである。

2 単純拡散

単純拡散(受動拡散)は、物質の基本的な膜透過形式であり、下記に示す特徴を有する。
・非特異的である。
・濃度勾配(電気化学ポテンシャルの差)に従う。
・飽和や他の物質との競合現象が認められず、常に一定の膜透過性を示す。
単純拡散に影響を与える因子には、物質の脂溶性、分子サイズ、水素結合がある。一般に脂溶性が高く、分子サイズが小さい物質が膜を透過しやすいとされており、また、水との間に水素結合を形成しないものが膜を透過しやすいとされている。
単純拡散の膜透過速度は、フィックの拡散速度式に従う。

A:透過した薬物量、Dm:薬物の膜内拡散係数、K:薬物の分配係数、S:膜の表面積、C1:高濃度側の薬物濃度、C2:低濃度側の薬物濃度、L:膜の厚さ

フィックの拡散速度式より、単純拡散の膜透過速度は拡散係数、分配係数、膜の表面積、濃度差と比例の関係を示し、膜の厚さと反比例の関係を示すと判断することができる。

3 pH分配仮説

pH分配仮説は、単純拡散による膜透過に関する仮説であり、薬物の生体膜透過について、分子形は脂溶性が高いため脂質二重層を通過できるが、イオン形は水溶性が高いため、脂質二重層を通過できないというものである。
pH分配仮説は、消化管からの吸収のみならず、生体膜透過過程が単純拡散の場合に適用される。
pH分配仮説より、弱酸性薬物のpHと吸収性の関係は以下のように表される。

4 担体介在輸送(能動輸送、促進拡散)

担体介在輸送は、透過物質に対して選択性をもつトランスポータータンパク質が関与している。担体介在性輸送には、エネルギーを利用する能動輸送と、エネルギーを利用しない促進拡散があり、以下の示す特徴を有する。

・基質となる物質の濃度が上昇すると飽和現象を示す。
・透過物質と類似構造を有するものにより輸送が阻害されることがある。
・遺伝子多型により個人差が生じる。

担体介在輸送に関わるトランスポータータンパク質は、発現する場所、駆動力、輸送の方向(細胞外→細胞内、細胞内→細胞外)など多様であり、それぞれの特徴を把握することにより、担体介在輸送による薬物の輸送をより深く理解することができる。

1) 担体介在輸送による膜透過速度

担体介在輸送による膜透過速度Jは、ミカエリス−メンテン式により表される。

Jmax:最大輸送速度、Km:ミカエリス定数、C:膜透過が生じる際の濃度

Km≫Cの場合、膜透過速度は下記の式に近似できることから、膜透過速度は濃度に比例する(1次速度に従う)。

また、Km≪Cの場合、膜透過速度は下記の式に近似できることから、膜透過速度は濃度に無関係に一定となる(0次速度に従う)。

上記のことから、濃度が低い場合、膜透過速度は濃度に比例するが、濃度の増加に伴って、膜透過速度が一定となるため、担体介在輸送では飽和現象が認められる。

5 受動輸送と能動輸送 

膜透過は利用するエネルギーによって受動輸送と能動輸送に分類される。

1)受動輸送

受動輸送は、細胞内外の透過物質の濃度差や電位差があるときに生じる電気化学ポテンシャルの差を利用して物質を輸送する。受動輸送では、濃度の高い方から低い方へ物質が移行する。

2)能動輸送

能動輸送は、電気化学ポテンシャル以外のエネルギーも利用する膜透過で、濃度勾配に逆らった輸送が認められる。能動輸送の中でも、ATPの加水分解エネルギーを直接利用するものを一次性能動輸送といい、一次性能動輸送によって生じたNaなどのイオン勾配がもつ電気化学ポテンシャルの差を利用するものを二次性能動輸送という。

6 膜動輸送

膜動輸送(サイトーシス)は、細胞膜の形質変化を伴う輸送形式であり、タンパク質などの高分子は膜動輸送により生体膜を透過する。細胞外から細胞内に物質を取り込む機構をエンドサイトーシス、細胞内から細胞外へ物質を排出していく機構をエキソサイトーシスという。
また、エンドサイトーシスには、大きな粒子を取り込むファゴサイトーシスと細胞外液を取り込むピノサイトーシスがある。

◇関連問題◇
第97回問42、第97回問167、第99回問166、第100回問41、第101回問166

 

 

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