薬剤師国家試験出題項目

分布容積と血漿タンパク結合、組織結合

循環血液中において、薬物は結合型薬物(タンパク質や血球に結合している薬物)と非結合型薬物(結合していない薬物)として存在している。薬物と血漿タンパク質との結合を血漿タンパク結合といい、大部分の薬物はタンパク質と可逆的に結合するため、結合型薬物と非結合型薬物との間には平衡状態が保たれている。一般に非結合型薬物のみが細胞膜を透過し、臓器・組織へ移行した後、薬効を発現したり、動態過程(代謝、排泄)に至る。

薬物の体内分布の主な変動要因には、分布容積、タンパク結合、血流量がある。

1 分布容積

分布容積とは、薬物が血中濃度と等しい濃度で均一に分布すると仮定したときの占有体液容積のことであり、組織・臓器への薬物移行性の指標となる。分布容積は、血中濃度と体内薬物量を関係付けるために導かれた比例定数であり、下記の式で表される。

例えば、体重60kg(体液量:約36L)のヒトに薬物A100mgを投与し、その血中濃度が1mg/Lである場合、薬物Aの分布容積は100Lとなる。また、薬物B100mgを投与し、その血中濃度が10mg/Lである場合、薬物Bの分布容積は10Lとなる。
上記のことから、分布容積とは実体積ではなく、薬物が血中濃度と同じ濃度で均一に分布したと仮定したときの体液量といえる。分布容積は個体全体の容積(L)または体重1kg当たりの容積(L/kg)で表される。分布容積と生理体液量と比較することで、薬物の生体分布を予測することが可能である。

1)生理体液量

成人の総体液量は体重の約60%(0.6L/kg)であり、細胞内液と細胞外液から構成される。このうち、細胞内液は体重の約40%(0.4L/kg)、細胞外液は体重の約20%(0.2L/kg)を占めている。さらに、細胞外液は組織間液(間質液)と血漿からなり、それぞれ体重の約15%(0.15L/kg)、約5%(0.05L/kg)を占める。

体重60kgとすると、血漿容積、細胞外液容積、総体液量はそれぞれ、3L、12L、36Lに相当する。

2)分布容積

ワルファリンはHASに強く結合するため、その分布容積は血漿と同程度である。アルベカシンは水溶性が高く、タンパク結合率が低いため、細胞外液全体に分布する。ジゴキシンは組織移行性が高く、細胞外液だけでなく、心筋や骨格筋などの筋組織へも取り込まれるため、全体液量よりも大きな分布容積を有する。アミオダロンは、細胞外液、細胞内液だけでなく、脂肪組織にも分布、蓄積するため、大きな分布容積を有する。

分布容積の数値より、薬物の分布を予測することが可能である。

①:Vd<15L以下の場合
薬物は主に細胞外液に存在する。
②:15L<Vd<50Lの場合
薬物は細胞膜を自由に透過し、全体液中に分布する。
③:Vd>50Lの場合
薬物は細胞内液・外液だけでなく、特定の組織に強く結合し蓄積している。

分布容積は年齢により異なる値を示す。その理由として、加齢に伴い体内水分量や体脂肪などが変化することが考えられる。体内水分量の割合は新生児で最も多く、加齢に伴い減少する。このことから、細胞外液に分布するような水溶性薬物の場合、新生児では分布容積が大きくなり、逆に高齢者では小さくなる。また、体脂肪率は加齢に伴い増加することから、脂溶性薬物の分布容積は成人よりも高齢者で増加する。

2 血漿タンパク結合と組織結合

血漿タンパク結合は、薬物の分布容積に影響を与える。また、薬物は組織内のタンパク質や核酸、脂肪などと結合し、組織内に滞留するため、組織結合も分布容積に影響を与える。
薬物が血漿と組織のみに分布する場合、体内薬物量(X)は血漿中薬物量(Xp)と組織中薬物(Xt)の総和となる。

X=Xp+Xt

また、薬物量は濃度と分布容積の積より求めることができるため、血漿中薬物量(Xp)と組織中薬物量(Xt)は下記の式で表される。

Xp=血漿中濃度(Cp)×血漿容積(Vp

Xt=組織中濃度(Ct)×組織容積(Vt

そのため、体内薬物量(X)は、X=Xp+Xt=Cp・Vp+Ct・Vtとなる。
このことから、分布容積(Vd)は、下記の式で表すことができる。

薬物分布が平衡状態にある場合、血漿中非結合型薬物濃度と組織中非結合薬物濃度は等しくなる。

非結合型薬物濃度は、非結合型分率と濃度の積より求めることができるため、薬物分布が平衡状態にある場合、血漿非結合型分率fp×Cp=組織非結合型分率ft×Ctが成立する。このことからVdは次式で表すことができる。

ワルファリンやジクロフェナクナトリウムのように血漿タンパク結合性が強く、組織タンパク質への結合が弱い場合では、fpが小さく、ftが大きくなるため、その分布容積は小さくなる。また、ジゴキシンのようにNa−K−ATPaseに対して特異的に結合するものは、ftが小さくなるため、その分布容積は大きくなる。

3 血流量

薬物は血流により組織・臓器に運ばれているため、血流量の変動は臓器への分布に影響を及ぼす。例えば、血流量の少ない脂肪には、薬物は分布しにくいが、血流量の多い臓器(腎臓、肝臓、肺など)には、薬物が分布しやすい。

 

◇関連問題◇
第101回問167、第103回問43、第103回問168

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