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全身麻酔薬

覚えること

  • 全身麻酔薬は、大きく吸入麻酔薬静脈麻酔薬に分けられる。
  • 吸入麻酔薬では、血液/ガス分配係数が小さいほど導入・覚醒が速い
  • 吸入麻酔薬では、MACが小さいほど麻酔作用が強い
  • ハロタンは心筋のカテコールアミン感受性を高め、不整脈を起こすことがある。
  • 亜酸化窒素は鎮痛作用が強いが、麻酔作用は弱い。
  • プロポフォール、チオペンタール、チアミラール、ミダゾラムはGABAA受容体を介して中枢神経を抑制する。
  • ケタミンはNMDA受容体を非競合的に遮断する。

全身麻酔とは

全身麻酔は、手術などを行う際に意識を消失させ、侵害刺激に対する反応や反射を抑制するために行われる
全身麻酔では、主に次の状態を得ることを目的とする。

  • 意識の消失
  • 侵害刺激に対する反応の抑制
  • 反射の抑制
  • 筋弛緩
  • 自律神経反射の抑制

実際の全身麻酔では、1つの薬物ですべてを得ようとするのではなく、麻酔薬、鎮痛薬、筋弛緩薬などを組み合わせることがある。

しもっち
全身麻酔は「眠らせれば終わり」ではないよ。手術では意識・痛み・反射・筋緊張などをまとめてコントロールする必要があります。
だから、複数の薬を組み合わせて使うことがあるんだね。

全身麻酔薬の作用順序

全身麻酔薬として適した薬物では、一般に大脳皮質 → 間脳 → 中脳 → 脊髄 → 延髄の順に中枢神経機能が抑制される。
これを不規則性下降性麻痺という。

全身麻酔薬の作用順序
大脳皮質→間脳→中脳
脊髄→延髄

手術に必要な麻酔状態を得るためには、呼吸中枢や血管運動中枢が存在する延髄を抑制する前に脊髄まで抑制できることが重要である。
延髄まで強く抑制されると、呼吸抑制や血圧低下など生命に関わる作用が現れる。

しもっち
順番を全部暗記するより、「延髄には呼吸中枢や血管運動中枢がある」と理解しておこう。
手術できる深さまで麻酔したいけど、延髄まで強く抑制したくないということだね。

麻酔過程

麻酔の深さは、第1期~第4期に分類される。

  • 第1期:無痛期 → 痛覚が低下・消失する。
  • 第2期:興奮期 → 意識が消失する一方、見かけ上の興奮がみられる。
  • 第3期:手術期 → 骨格筋が弛緩し、手術に適した状態となる。
  • 第4期:中毒期 → 延髄が抑制され、呼吸抑制・血圧低下などが現れる。
重要
手術に適しているのは第3期(手術期)
第4期まで進むと延髄の呼吸中枢・血管運動中枢まで強く抑制される。

全身麻酔薬の分類

全身麻酔薬は大きく吸入麻酔薬静脈麻酔薬に分類される。

吸入麻酔薬

  • ハロタン
  • イソフルラン
  • セボフルラン
  • デスフルラン
  • 亜酸化窒素

吸入麻酔薬は、静脈麻酔薬と比較して麻酔の維持や麻酔深度の調節がしやすいことが特徴である。

静脈麻酔薬

  • プロポフォール
  • チオペンタールナトリウム
  • チアミラールナトリウム
  • ミダゾラム
  • ケタミン

静脈麻酔薬は作用発現が速いため、麻酔の導入などに用いられる。

吸入麻酔薬

血液/ガス分配係数

吸入麻酔薬の導入・覚醒の速さを考えるうえで重要なのが、血液/ガス分配係数である。
血液/ガス分配係数は、37℃、1気圧において血液にどの程度麻酔薬が溶けるかを表す指標である。

血液/ガス分配係数が小さい
血液に溶けにくい→肺胞から血液が速やかに飽和する→脳内分圧も速やかに上昇する
麻酔導入が速い
排出時にも速やかに肺へ移行するため覚醒も速い

したがって、血液/ガス分配係数が小さいほど、麻酔の導入・覚醒は速いと覚える。

しもっち
血液/ガス分配係数は「麻酔作用の強さ」ではなく「速さ」を見る指標です。
小さい → 血液に溶けにくい → 導入・覚醒が速い
ここはMACとごちゃ混ぜにしないようにしよう。

MAC(最小肺胞濃度)

MAC(最小肺胞濃度)は、手術刺激を加えたときに50%のヒトで体動が認められなくなる肺胞内麻酔薬濃度である。
MACは吸入麻酔薬の麻酔作用の強さ(力価)を比較する指標として用いられる。

MACが小さい
少ない濃度で麻酔できる麻酔作用が強い
MACが大きい
高い濃度が必要麻酔作用が弱い

しもっち
ここは国試でかなり狙われます。
血液/ガス分配係数 → 導入・覚醒の「速さ」
MAC → 麻酔作用の「強さ」
この2つを必ず分けて考えよう。

ハロタン

ハロタンは強い麻酔作用を有する吸入麻酔薬である。一方で、鎮痛作用は比較的弱い。

⚫️重要な特徴

  • 麻酔作用が強い
  • 鎮痛作用は弱い
  • 心筋のカテコールアミン感受性を増大させる
  • アドレナリンなどとの併用で心室性不整脈を起こすことがある
  • 肝障害を起こすことがある
  • まれに悪性高熱症を起こすことがある
しもっち
ハロタンでまず覚えてほしいのは、「心筋がカテコールアミンに敏感になる」こと。
だからアドレナリンなどが作用すると、不整脈が起こりやすくなるとつなげよう。

イソフルラン・セボフルラン

イソフルラン、セボフルランはハロタンと比較して血液への溶解度が低く、導入・覚醒が速いという特徴を有する。

  • 麻酔深度を調節しやすい
  • ハロタンより心筋のカテコールアミン感受性増大作用が弱い
  • ハロタンと比較して肝毒性が小さい

特にセボフルランは血液/ガス分配係数が小さく、導入・覚醒が速い

亜酸化窒素(笑気:N2O)

亜酸化窒素は、鎮痛作用が強い一方、麻酔作用が弱いという特徴を有する。

  • 血液/ガス分配係数が小さいため、導入・覚醒が速い
  • MACが非常に大きいため、麻酔作用は弱い
  • 鎮痛作用は強い
  • 酸素欠乏症に注意する

酸素欠乏症を防ぐため、使用時には酸素を併用する。

しもっち
亜酸化窒素は2つの指標を一緒に確認できる良い薬です。
血液/ガス分配係数が小さい → 導入・覚醒は速い
MACが大きい → 麻酔作用は弱い
「速い=強い」ではないことが分かるね。

静脈麻酔薬

静脈麻酔薬は、作用発現が速いため、主に麻酔導入などに用いられる。

プロポフォール

プロポフォールは超短時間作用型の静脈麻酔薬である。
GABAA受容体の機能を増強し、中枢神経系の抑制を強めることで麻酔作用を示す。

  • GABAA受容体機能増強
  • 麻酔導入が速い
  • 覚醒が速い
  • 体内蓄積が比較的少ない
  • 持続点滴静注による全静脈麻酔にも用いられる
プロポフォール
GABAA受容体機能↑
Clによる抑制性神経伝達↑中枢神経活動↓
麻酔作用

チオペンタール・チアミラール

チオペンタールナトリウム、チアミラールナトリウムはバルビツール酸系の超短時間作用型静脈麻酔薬である。
GABAA受容体のバルビツール酸結合部位に作用し、GABAによる中枢神経抑制作用を増強する。

なぜ作用時間が短い?

チオペンタールなどは脂溶性が高いため、静脈内投与後すみやかに脳へ移行して麻酔作用を示す。
その後、薬物が脳から筋肉や脂肪組織などへ再分配されるため、脳内濃度が速やかに低下して麻酔作用が消失する。

静脈内投与
脂溶性が高いため脳へ速やかに移行→麻酔作用
脂肪組織などへ再分配→脳内濃度↓
麻酔作用が速やかに消失

また、ヒスタミン遊離作用があるため、重症気管支喘息患者などでは注意が必要である。

しもっち
チオペンタールの作用が短い理由を「代謝が速いから」と覚えないようにしよう。
重要なのは再分配
脳から脂肪組織などへ移動する → 脳内濃度が下がる → 麻酔から覚めるという流れです。

ミダゾラム

ミダゾラムはベンゾジアゼピン系の薬物であり、GABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用する。
GABAによる抑制性神経伝達を増強することで、鎮静・麻酔作用を示す。

  • GABAA受容体機能増強
  • 作用発現が速い
  • 全身麻酔の導入などに用いられる
  • 作用に拮抗する薬としてフルマゼニルがある

ケタミン

ケタミンは、他の代表的な静脈麻酔薬とは作用機序が大きく異なる。
グルタミン酸のNMDA受容体を非競合的に遮断することで麻酔・鎮痛作用を示す。

ケタミン
NMDA受容体を非競合的に遮断
→グルタミン酸による興奮性神経伝達↓→鎮痛・麻酔作用

また、ケタミンでは意識の解離状態が認められることから、解離性麻酔薬と呼ばれる。

しもっち
静脈麻酔薬の受容体は絶対に整理しておこう。
プロポフォール → GABAA
チオペンタール・チアミラール → GABAA
ミダゾラム → GABAA
ケタミン → NMDA遮断
国試では受容体を入れ替えた選択肢が作りやすいところだよ。

神経遮断性麻酔

ドロペリドール+フェンタニル

ドロペリドールによる神経遮断作用と、フェンタニルによる強力な鎮痛作用を組み合わせることで、神経遮断性麻酔に応用される。
完全に意識を消失させるのではなく、呼びかけに応答できる程度の意識を保ちながら、手術可能な無痛状態を得ることができる。

麻酔前投薬

麻酔前投薬は、全身麻酔の導入・維持を円滑にし、麻酔薬や手術による副作用を軽減することを目的として行われる。

麻酔前投薬の考え方

  • 不安を軽減する → ベンゾジアゼピン系薬
  • 痛みを抑える → オピオイド鎮痛薬など
  • 筋肉を弛緩させる → 筋弛緩薬
  • 気管支分泌や迷走神経反射を抑える → アトロピンなど
  • 不整脈を抑える → β受容体遮断薬など
  • 悪心・嘔吐を抑える → 制吐作用を有する薬物
しもっち
麻酔前投薬は薬の名前だけを暗記するより、「手術前に何を防ぎたい?から考えよう。

不安? → 鎮静
痛み? → 鎮痛
筋緊張? → 筋弛緩
分泌・徐脈? → 抗コリン薬

目的から薬を選べるようにすると覚えやすいよ。

国家試験での狙い目

全身麻酔薬では、単純な薬物名の暗記だけでなく、「麻酔の速さ」「麻酔作用の強さ」「作用する受容体」「作用時間が短い理由」を組み合わせて問われる。

  • 血液/ガス分配係数が小さい → 導入・覚醒が速い
  • MACが小さい → 麻酔作用が強い
  • 亜酸化窒素 → 血液/ガス分配係数が小さい → 導入・覚醒が速い
  • 亜酸化窒素 → MACが大きい → 麻酔作用は弱い
  • ハロタン → 心筋のカテコールアミン感受性↑ → 不整脈
  • プロポフォール → GABAA受容体機能増強
  • チオペンタール・チアミラール → GABAA受容体のバルビツール酸結合部位
  • チオペンタール → 再分配により作用時間が短い
  • ミダゾラム → GABAA受容体 → フルマゼニル
  • ケタミン → NMDA受容体非競合的遮断 → 解離性麻酔
しもっち
全身麻酔薬で特に混乱しやすいのが、「小さい方が何だった?というところ。
血液/ガス分配係数が小さい → 速い
MACが小さい → 強い
まずこの2本を確実にしてから、各薬の特徴を乗せていこう。

1問1答で確認しよう

Q1.吸入麻酔薬の導入・覚醒速度と関係する指標は?
血液/ガス分配係数。

Q2.血液/ガス分配係数が小さいほど、麻酔導入は速い?遅い?
速い。

Q3.MACが小さいほど、麻酔作用は強い?弱い?
強い。

Q4.心筋のカテコールアミン感受性を増大させる代表的な吸入麻酔薬は?
ハロタン。

Q5.鎮痛作用が強い一方、麻酔作用が弱い吸入麻酔薬は?
亜酸化窒素。

Q6.プロポフォールが作用する受容体は?
GABAA受容体。

Q7.チオペンタールの作用時間が短い主な理由は?
脳から脂肪組織などへ再分配されるため。

Q8.ミダゾラムの作用に拮抗する薬は?
フルマゼニル。

Q9.ケタミンが遮断する受容体は?
NMDA受容体。

Q10.ケタミンは何麻酔薬と呼ばれる?
解離性麻酔薬。

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