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免疫系に作用する薬

覚えること

  • 免疫は自然免疫獲得免疫に分けて考える。
  • 獲得免疫では、Th1 → 細胞性免疫、Th2 → 液性免疫が基本である。
  • Th1はIL-2・IFN-γを介してT細胞やマクロファージを活性化する。
  • Th2はIL-4・IL-5・IL-13を介してB細胞や抗体産生を促進する。
  • シクロスポリン・タクロリムスはカルシニューリンを阻害し、IL-2などのサイトカイン産生を抑制する。
  • アザチオプリン・ミゾリビン・ミコフェノール酸モフェチルはプリン代謝を阻害し、リンパ球増殖を抑制する。
  • シクロホスファミドはDNAをアルキル化し、T細胞・B細胞の増殖を抑制する。
  • バシリキシマブはIL-2受容体α鎖を遮断する。
  • エベロリムスはmTORを阻害してT細胞増殖を抑制する。
  • 免疫抑制薬では感染症・骨髄抑制・腎障害などに注意する。

免疫の基本

免疫とは、病原微生物や異常な細胞などを「非自己」として認識し、排除する生体防御機構である。
免疫は大きく、自然免疫獲得免疫に分けられる。

自然免疫

自然免疫は、生まれたときから備わっている免疫機構であり、異物に対して即時的・非特異的に反応する。
主に、好中球、マクロファージ、NK細胞などが関与する。

獲得免疫

獲得免疫は、抗原を特異的に認識して反応する免疫である。

大きく、

  • T細胞が中心 → 細胞性免疫
  • B細胞が中心 → 液性免疫

に分けられる。

獲得免疫の流れ

抗原提示細胞が抗原を取り込み、その一部をペプチド断片としてヘルパーT細胞に提示する。
抗原を認識したヘルパーT細胞は、Th1細胞またはTh2細胞へ分化する。

Th1細胞

  • IFN-γ → マクロファージ活性化
  • IL-2 → 細胞傷害性T細胞の活性化・増殖

そのためTh1細胞は、主に細胞性免疫に関与する。

Th2細胞

  • IL-4
  • IL-5
  • IL-13

などを放出し、B細胞を形質細胞へ分化させ、抗体産生を促進する。
そのためTh2細胞は、主に液性免疫に関与する。

しもっち
免疫抑制薬を覚える前に、「どの細胞を止めたい薬なのか」を見よう。
Th1 → IL-2 → T細胞を増やす
Th2 → IL-4・5・13 → B細胞・抗体を増やす
免疫抑制薬は、この流れのどこかを止める薬です。

免疫抑制薬

免疫抑制薬は、過剰な免疫反応や移植臓器に対する免疫反応を抑制する薬物である。
主に、

  • 臓器移植後の拒絶反応
  • 移植片対宿主病(GVHD)
  • 自己免疫疾患
  • 炎症性疾患

などに用いられる。

国家試験では、「免疫反応のどこを止める薬か」で分類することが重要である。

カルシニューリン阻害薬

代表薬には、シクロスポリン、タクロリムスがある。
どちらもT細胞内でイムノフィリンと複合体を形成し、カルシニューリンを阻害する。
カルシニューリンが阻害されると、転写因子NF-ATの脱リン酸化が抑制され、IL-2やIFN-γなどのサイトカイン産生が低下する。
その結果、T細胞の活性化・増殖が抑制される。

カルシニューリン阻害薬
イムノフィリンと結合
カルシニューリン阻害→NF-ATの脱リン酸化抑制
→IL-2などの産生抑制→T細胞活性化抑制

シクロスポリン

シクロスポリンは、シクロフィリンと結合して複合体を形成する。
この複合体がカルシニューリンを阻害することで、T細胞におけるサイトカイン産生を抑制する。

  • シクロフィリンと結合
  • カルシニューリン阻害
  • IL-2産生抑制
  • 臓器移植後の拒絶反応抑制などに用いられる

⚫️主な副作用

  • 腎障害
  • 肝障害
  • 感染症

免疫抑制作用によってワクチン由来病原体が増殖する可能性があるため、生ワクチンとの併用に注意する。

タクロリムス

タクロリムスは、FKBP(FK506結合タンパク質)と結合する。
この複合体がカルシニューリンを阻害し、IL-2などのサイトカイン産生を抑制する。

  • FKBPと結合
  • カルシニューリン阻害
  • シクロスポリンより免疫抑制作用が強い

⚫️主な副作用

  • 腎障害
  • 肝障害
  • 感染症
  • 高血糖
しもっち
シクロスポリンとタクロリムスは、最後に止める場所は同じです。
シクロスポリン → シクロフィリン
タクロリムス → FKBP
その後はどちらもカルシニューリン阻害 → IL-2↓
結合するイムノフィリンを入れ替えないようにしよう。

プリン代謝拮抗薬

リンパ球が増殖するためには、DNA・RNA合成に必要なプリン塩基が必要である。そこでプリン代謝を阻害すると、リンパ球の増殖を抑制することができる。

アザチオプリン

アザチオプリンは体内で代謝され、メルカプトプリンとなって作用する。
さらにチオイノシン酸となり、イノシン酸と拮抗することでプリン代謝経路を阻害する。
その結果、DNA合成が抑制され、リンパ球の増殖が抑えられる。

⚫️主な副作用

  • 骨髄抑制
  • 肝障害
  • 感染症

ミゾリビン

ミゾリビンは、イノシン酸からグアニル酸への代謝経路を阻害することで免疫抑制作用を示す。アザチオプリンと異なり、DNA・RNAなどの高分子核酸に取り込まれずに作用する。

ミコフェノール酸モフェチル

ミコフェノール酸モフェチルは体内でミコフェノール酸となって作用する。
ミコフェノール酸は、イノシン酸からグアニル酸への代謝経路を阻害し、プリン塩基合成を抑制する。
その結果、主にリンパ球の核酸合成を抑制し、免疫抑制作用を示す。

⚫️主な副作用

  • 消化器障害
  • 血液障害
  • 感染症
しもっち
プリン代謝拮抗薬は、「リンパ球を増やすための材料を作らせない薬」と考えよう。
アザチオプリン → メルカプトプリンへ変換
ミゾリビン・ミコフェノール酸 → グアニル酸合成↓
最終的にはリンパ球増殖↓につながります。

アルキル化薬

シクロホスファミド

シクロホスファミドはプロドラッグであり、体内でCYP2B6によって活性化される。活性代謝物がDNAをアルキル化することで、T細胞・B細胞の分化・増殖を抑制する。

⚫️主な副作用

  • 骨髄抑制
  • 出血性膀胱炎
  • 間質性肺炎
  • 心不全

シクロホスファミドによる出血性膀胱炎を予防するため、メスナを併用することがある。

しもっち
シクロホスファミドを見たら、「DNAアルキル化」だけで終わらせないこと。
出血性膀胱炎 → メスナ
ここまでセットで押さえておこう。

IL-2受容体阻害薬

バシリキシマブ

バシリキシマブは、IL-2受容体α鎖に対するモノクローナル抗体である。
T細胞表面のIL-2受容体α鎖に結合し、IL-2によるT細胞の活性化・増殖を抑制する。主に、腎移植における急性拒絶反応の抑制に用いられる。

⚫️主な副作用

  • 発熱
  • 急性過敏反応
  • 感染症
しもっち
カルシニューリン阻害薬とバシリキシマブを比較しよう。
カルシニューリン阻害薬 → IL-2を作らせない
バシリキシマブ → IL-2を受容体で作用させない
同じIL-2関連でも、止めている場所が違うよ。

細胞増殖シグナル阻害薬

エベロリムス

エベロリムスはT細胞内のFKBPと結合する。
ただしタクロリムスとは異なり、カルシニューリンではなくmTORを阻害する。
mTORを阻害することで、細胞周期のG1期からS期への進行を抑え、T細胞の増殖を抑制する。

⚫️主な副作用

  • 腎障害
  • 感染症
  • 貧血
しもっち
タクロリムスもエベロリムスもFKBPに結合します。でも、その先が違うよ。
タクロリムス → カルシニューリン阻害
エベロリムス → mTOR阻害
ここはかなりひっかけやすいところです。

リンパ球増殖抑制薬

グスペリムス

グスペリムスは、細胞傷害性Tリンパ球への成熟・増殖を抑制するとともに、
活性化B細胞の増殖・分化も抑制する。
その結果、抗体産生も抑制し、免疫抑制作用を示す。
主に腎移植後の拒絶反応などに用いられる。
なお、グスペリムスは抗IL-2受容体抗体ではない
抗IL-2受容体抗体はバシリキシマブである。

免疫増強薬

遺伝子組換えIL-2製剤

代表薬には、テセロイキン、セルモロイキンがある。
IL-2を補うことで、NK細胞、T細胞、細胞傷害性T細胞を活性化し、免疫反応を増強する。

  • テセロイキン:血管肉腫、腎がんなど
  • セルモロイキン:血管肉腫など
しもっち
ここまで免疫を抑える薬が多かったけど、
IL-2製剤は逆です。
IL-2を投与 → T細胞・NK細胞を活性化 → 免疫を強める
「IL-2関連薬=全部免疫抑制」と思わないようにしよう。

免疫抑制薬に共通する注意点

免疫抑制薬では、免疫機能そのものを低下させるため、感染症が共通して重要な副作用となる。

また薬によって、

  • 腎障害
  • 肝障害
  • 骨髄抑制
  • 高血糖

などにも注意する。

さらに一部の免疫抑制薬では、生ワクチンによる感染症を起こす可能性があるため、生ワクチンとの併用に注意する。

作用点で整理しよう

  • シクロスポリン → シクロフィリン → カルシニューリン阻害
  • タクロリムス → FKBP → カルシニューリン阻害
  • アザチオプリン → プリン代謝阻害
  • ミゾリビン → グアニル酸合成阻害
  • ミコフェノール酸モフェチル → グアニル酸合成阻害
  • シクロホスファミド → DNAアルキル化
  • バシリキシマブ → IL-2受容体α鎖遮断
  • エベロリムス → FKBP → mTOR阻害

国家試験での狙い目

  • Th1 → IL-2・IFN-γ → 細胞性免疫
  • Th2 → IL-4・IL-5・IL-13 → 液性免疫
  • シクロスポリン → シクロフィリン
  • タクロリムス → FKBP
  • カルシニューリン阻害 → NF-AT活性化↓ → IL-2産生↓
  • アザチオプリン → メルカプトプリンへ代謝
  • ミゾリビン → 高分子核酸に取り込まれない
  • ミコフェノール酸モフェチル → グアニル酸合成↓
  • シクロホスファミド → CYP2B6で活性化 → DNAアルキル化
  • シクロホスファミド → 出血性膀胱炎 → メスナ
  • バシリキシマブ → IL-2受容体α鎖
  • エベロリムス → mTOR阻害
しもっち
免疫抑制薬は、「どの薬が何の病気に使える?」だけで覚えないようにしよう。
まず、
① サイトカインを作らせない?
② リンパ球のDNA合成を止める?
③ IL-2を受容体で止める?
④ 細胞増殖シグナルを止める?
と作用点を決める。
そこから薬物名を当てられるようにすると、
選択肢の入れ替え問題にかなり強くなるよ。

1問1答で確認しよう

Q1.Th1細胞が産生し、T細胞増殖に重要なサイトカインは?
IL-2。

Q2.Th2細胞が産生する代表的なサイトカインは?
IL-4、IL-5、IL-13。

Q3.シクロスポリンの結合部位は?
シクロフィリン。

Q4.タクロリムスの結合部位は?
FKBP。

Q5.シクロスポリンとタクロリムスが共通して阻害する酵素は?
カルシニューリン。

Q6.アザチオプリンの活性代謝物は?
メルカプトプリン。

Q7.シクロホスファミドの特徴的な副作用と予防薬は?
出血性膀胱炎、メスナ。

Q8.バシリキシマブが結合する標的は?
IL-2受容体α鎖。

Q9.エベロリムスが阻害する細胞増殖シグナル分子は?
mTOR。

Q10.免疫抑制薬で共通して注意する副作用は?
感染症。

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