薬剤師国家試験出題項目

催眠薬

催眠薬

催眠薬は、睡眠に類似した状態に導入する薬物であり、入眠に至るまでの時間を短縮し、入眠後の覚醒回数を減少させるとともに睡眠時間を延長させる。催眠薬は、化学構造や作用機序の違いからバルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアセピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などに分類される。

1 睡眠

 睡眠の状態は、脳波パターンの変化、眼球運動、筋緊張などを合わせて、レム睡眠(REM sleep:rapid eye movement sleep)、ノンレム睡眠(non–REM)に分類される。

●レム睡眠
急速眼球運動が認められる睡眠状態であり、脳は覚醒状態にあるが、身体は眠った状態(筋肉は弛緩した状態)にある。全睡眠の20〜30%を占め、この状態では、夢体験が高確率で現れる。

●ノンレム睡眠
急速眼球運動が認められない睡眠状態であり、脳は眠った状態にあるが、筋緊張が残った状態にある。ノンレム睡眠は、睡眠深度から3相に分類される。

・ノンレム1:低振幅の徐波と速波が認められる。
・ノンレム2:K複合、紡錘波などが認められる。
・ノンレム3:睡眠徐波が認められる。

2 催眠薬

1)GABAA受容体

 バルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアセピン系睡眠薬は、GABAA受容体のバルビツール酸結合部位、ベンゾジアゼピン結合部位の結合することにより鎮静作用、催眠作用を示す。

ベンゾジアゼピン受容体

ベンゾジアゼピン受容体はω受容体ともいわれ、ω1、ω2に分類される。ω1:脳全体に存在し、鎮静、催眠、健忘に関わる。
ω2:前脳、脊髄などの存在し、抗不安、筋弛緩、抗痙攣に関わる。

2)バルビツール酸系催眠薬

バルビツール酸系催眠薬は、脳幹網様体に存在するGABAA受容体に作用し、上行性網様体賦活化系を抑制することで鎮静作用や催眠作用を示す。現在では、「中毒症状や依存症を生じやすい」
「REM睡眠を抑制する(自然な睡眠が得られにくい)」ことからあまり用いられていない。

<薬理作用>
●鎮静作用
●抗不安作用
少量で認められるが、ベンゾジアゼピン系薬に比べ作用が弱い
●催眠作用
non–REM睡眠を延長し、REM睡眠が短縮されるため、覚醒時に不快感を伴う
●抗痙攣作用
フェノバルビタールは少量で抗痙攣作用を示すことから抗てんかん薬として用いられる。
●麻酔作用
チオペンタールやチアミラールは、麻酔の導入や吸入麻酔薬の補助薬として用いられる。

<副作用>
●過量投与による呼吸麻痺
呼吸麻痺の解毒薬として、ジモルホラミンが用いられる。
●耐性
長期連用により、代謝酵素が誘導され、効果が現れにくくなる。また、神経組織感受性が低下することで効果が現れにくくなる。
●薬物依存
精神依存、身体依存を生じることがある。

3)ベンゾジアゼピン系催眠薬

 睡眠導入や麻酔前投薬のよく用いられるベンゾジアゼピン系薬には、ベンゾジアゼピン誘導体とチエノジアゼピン誘導体がある。ベンゾジアゼピン系薬は、主に大脳辺縁系のGABAA受容体に存在するベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABA神経系を活性化することにより過剰な興奮を抑制する。

●特徴
・バルビツール酸系薬と異なり、REM睡眠の抑制作用が弱く、自然な睡眠が得られやすい。
・過量投与しても呼吸抑制や循環器障害を起こしにくく、安全性が高い。
・作用時間が短いものほど、反跳性不眠、耐性、依存を引き起こしやすい。
・短時間型、超短時間型で一過性前向性健忘が認められることがある。
・中時間型、長時間型で持ち越し効果(ハングオーバー)を誘発しやすい。
・解毒薬として、ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬であるフルマゼニルが用いられることがある。
・急性閉塞緑内障、重症筋無力症に投与禁忌とされている。

4)非ベンゾジアゼピン系催眠薬

ベンゾジアゼピン系薬と構造が異なるが、GABAAのベンゾジアゼピン結合部位に結合し、GABA神経系を活性化することにより過剰な興奮を抑制する。非ベンゾジアゼピン系薬には、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンがあり、それらは、半減期が短く、睡眠導入薬として用いられている。

ゾルピデムは、選択的にω1受容体に作用することにより、催眠作用を発現するため、ω2受容体刺激による筋弛緩作用が現れにくいとされている。
ベンゾジアゼピン系薬と同様に連用により薬物依存(精神的依存、身体的依存)、耐性を生じることがある。

5)メラトニン受容体作動薬

 メラトニン受容体作動薬には、ラメルテオンがある。ラメルテオンは、睡眠覚醒リズムに関わるメラトニン受容体MT1及びMT2を刺激することにより睡眠中枢を優位に導くことで睡眠を誘発する。また、副交感神経を優位に保つことにより自律神経を抑制する。

副作用として、筋弛緩、前向性健忘、反跳性不眠、依存をほとんど起こさないとされている。主にCYP1A2により代謝されるため、CYP1A2阻害作用の強い薬剤(フルボキサミンなど)とは併用禁忌とされている。

6)オレキシン受容体拮抗薬

オレキシン受容体拮抗薬には、スボレキサントがある。スボレキサントは、覚醒を促進する神経ペプチドであるオレキシンAおよびBの受容体への結合を可逆に阻害することにより脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させる。

副作用として、筋弛緩、呼吸抑制、依存、耐性を生じにくいとされている。主にCYP3A4により代謝されるため、CYP3A4阻害作用の強い薬剤(クラリスロマイシンなど)とは併用禁忌とされている。

7)その他の催眠薬

●抱水クロラール
 肝においてアルコールデヒドラターゼによりトリクロロエタノールに代謝され、催眠鎮静作用を示す。検査時の催眠鎮静などに利用される。安全域が狭い、胃刺激性、循環・呼吸器系に対する障害などがあるため、あまり用いられていない。

 ●ブロモバレリル尿素

作用発現が速く、持続時間は短い催眠鎮静作用を示し、不眠症や不安緊張状態の鎮静に用いられる。連用により薬物依存を生じることがあり、また、連用中の投与量の急激な減少により禁断症状(痙攣発作、せん妄、振戦、不安 など)を呈することがある。

◇関連問題◇
第92回問124、第98回問155、第99回問30、第100回問155、第101回問155、第102回問155

◇テキスト◇
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