ヨウ素(Iodine, I)は、周期表の第17族(ハロゲン元素)に属する元素であり、化学記号はI、原子番号は53である。ヨウ素は人体にとって必須微量元素であり、特に甲状腺ホルモンの合成に欠かせない重要な役割を果たしている。
物理的および化学的特性
- 外観:
- 常温では、光沢のある暗紫色の結晶状固体である。
- 昇華性:
- ヨウ素は加熱すると直接気体に変化し、紫色の蒸気を発する(昇華)。
- 溶解性:
- 水にはわずかに溶けるが、アルコールやヨウ化カリウム溶液にはよく溶ける。
- 化学反応性:
- 他のハロゲン元素に比べると反応性は低いが、酸化剤や還元剤として機能する。
生物学的役割
ヨウ素は生体内で主に以下の機能を果たす:
- 甲状腺ホルモンの合成:
- 甲状腺に取り込まれ、チロキシン(T4)やトリヨードチロニン(T3)といったホルモンの成分となる。
- これらのホルモンは基礎代謝や成長、エネルギー消費の調節に関与する。
- 発育と代謝:
- 胎児や乳児の脳の発達および神経系の形成に不可欠である。
- 免疫機能:
- 抗菌性があり、消毒剤としても利用される。
摂取源
ヨウ素は以下の食品や環境から摂取される:
- 海藻類(昆布、わかめ、ひじきなど)
- 魚介類(魚、貝類、エビなど)
- ヨウ素添加塩(ヨウ素が添加された食塩)
- 卵や乳製品
不足による影響
ヨウ素が不足すると以下のような健康問題が生じる:
- 甲状腺腫:
- ヨウ素不足により甲状腺が拡大する疾患である。
- クレチン症:
- 胎児や乳児期のヨウ素欠乏により、発達障害や知的障害を引き起こす可能性がある。
- 代謝異常:
- エネルギー消費や体温調節が困難になる。
過剰摂取の影響
ヨウ素を過剰に摂取すると健康に悪影響を与えることがある:
- 甲状腺機能低下症または甲状腺機能亢進症:
- ヨウ素の過剰摂取が甲状腺機能の異常を引き起こす。
- ヨウ素中毒:
- 嘔吐、下痢、粘膜の刺激症状などが発生する場合がある。
環境と安全性
- 自然界での存在:
- 主に海水や海藻に含まれているが、土壌中にも存在する。
- 安全性:
- 適量のヨウ素摂取は健康に良いが、過剰摂取や不適切な使用は健康リスクを伴うため注意が必要である。





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