ポリオウイルス(Poliovirus)は、ピコルナウイルス科(Picornaviridae)に属するRNAウイルスで、急性灰白髄炎(ポリオ)を引き起こす。このウイルスは、主に乳幼児を中心に感染し、重症化すると運動神経細胞(運動ニューロン)を破壊し、筋肉の麻痺を引き起こす。
ポリオウイルスの特徴
- 遺伝子の種類
- 一本鎖のプラス鎖RNAウイルス。
- 非エンベロープウイルス(エンベロープを持たないため外部環境に強い)。
- 構造
- 小型ウイルスで、カプシド(タンパク質の殻)に覆われている。
- 高温、酸性環境、消毒剤に対する耐性があり、胃酸にも耐えることができる。
- 感染対象
- 人間のみを宿主とする。
感染経路
- 主に経口感染
- 汚染された水や食物を介して体内に侵入する。
- 感染者の糞便に含まれるウイルスが不衛生な環境で他の人に広がる。
感染メカニズム
- 侵入:ポリオウイルスは口から体内に入り、主に腸管で増殖する。
- 血流への拡散:一部のウイルスが血液中に侵入(ウイルス血症)する。
- 中枢神経系への感染:
- 重症例では脊髄や脳幹の運動ニューロンを攻撃し、筋肉の麻痺を引き起こす。
- 感染者のうち、約1%未満が麻痺性ポリオを発症する。
症状
ポリオウイルスに感染した多くの人は無症状で終わりますが、一部で症状が現れる。
軽症(非麻痺性ポリオ)
- 発熱、喉の痛み、倦怠感
- 頭痛、吐き気
- 筋肉痛や筋肉のこわばり
重症(麻痺性ポリオ)
- 急性の筋力低下や麻痺(通常、片側の手足に発生)
- 呼吸筋が麻痺する場合、人工呼吸が必要になることがある。
ポリオの合併症
- 永続的な麻痺:運動ニューロンが破壊されると、回復することなく筋力低下や麻痺が残ることがある。
予防方法
- ワクチン接種
ポリオウイルスを予防するために、以下の2種類のワクチンが使用されます。- 不活化ポリオワクチン(IPV): 注射型。安全性が高い。
- 経口ポリオワクチン(OPV): 飲用型。効果は高いがまれに副作用がある。
- 衛生管理
- 飲料水や食物の衛生管理を徹底する。
- 糞便による汚染を防ぐための適切な衛生環境の維持。
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