ヘリコバクター・ピロリ菌（Helicobacter pylori）

ヘリコバクター・ピロリ菌（Helicobacter pylori）は、主にヒトの胃に感染する螺旋状のグラム陰性細菌である。この菌は胃粘膜に定着し、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんなどの消化器疾患と強く関連している。

特徴

1. 形態と運動性:
   • ヘリコバクター・ピロリ菌は螺旋状の形態を有しており、この形状により胃の粘液層を効率的に移動できる。
   • 鞭毛を持ち、それを用いて活発に運動し、胃粘膜に定着する。
2. 環境への適応:
   • 胃内は強酸性（pH 1.5～3程度）であるが、この菌はウレアーゼ酵素を産生することでアンモニアを生成し、局所的にpHを中和して生存する。
   • 胃粘膜を覆う粘液層内に潜り込み、酸から身を守る。
3. 感染経路:
   • 主に経口感染で伝播するとされる。汚染された水や食物、あるいは感染者との接触を通じて感染する。
   • 感染は主に幼少期に起こることが多い。

診断

• 非侵襲的診断:
  • 尿素呼気試験: ウレアーゼ活性を利用して診断する。
  • 血清抗体検査: 感染歴を検出する。
  • 糞便抗原検査: ピロリ菌の抗原を検出する。
• 侵襲的診断:
  • 胃内視鏡検査により採取された胃粘膜の生検組織を培養、迅速ウレアーゼ試験、またはPCR検査で確認する。

治療

• ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の治療には、抗生物質（クラリスロマイシン、アモキシシリンなど）とプロトンポンプ阻害薬（PPI）を組み合わせた除菌療法が行われる。
• 日本では除菌治療が保険適用されており、ピロリ菌感染が確認されると、胃炎や潰瘍の治療として積極的に除菌が行われる。

予防

• • 胃粘膜の炎症や損傷を引き起こすことにより、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍を引き起こす。
  • 長期感染は胃がんのリスクを増加させることが知られている。
  • 感染を予防するためには、衛生的な生活習慣を維持することが重要である。例えば、清潔な水の利用や手洗いの徹底が推奨される。