ヘパリンは、自然に存在する強力な抗凝固剤(血液凝固を防ぐ物質)であり、主に血液の凝固を抑制する役割を果たす。血管内で血液が凝固することを防ぐために使用される薬剤であり、特に血栓症の予防や治療に利用される。
構造と性質
- 化学構造: ヘパリンは、硫酸化されたグリコサミノグリカン(GAG)の一種で、構造中に硫酸基やカルボキシル基を有している。これにより、非常に高い負の電荷を持つ。
- 物理的性質: 水溶性であり、通常、注射薬として使用される。
- サイズと構成: ヘパリンは、数百から数千の糖単位から構成され、重合度が高い。
作用機序
ヘパリンは、主にアンチトロンビンIII(ATIII)と結びつき、その抗凝固作用を強化することで機能する:
- アンチトロンビンIIIとの結合:
ヘパリンはアンチトロンビンIIIと結合し、その活性を増強する。これにより、アンチトロンビンIIIは血液凝固因子であるトロンビンや因子Xaを不活化し、血液の凝固を防ぐ。 - 凝固因子の抑制:
ヘパリンは、凝固因子(特にトロンビンと因子Xa)に対する直接的な抑制効果も持つ。
使用と用途
- 血栓症の治療と予防:
- ヘパリンは、血栓(血液の塊)が形成されることを防ぐために使用される。これにより、深部静脈血栓症(DVT)、肺血栓塞栓症(PE)、心筋梗塞、脳梗塞などの予防や治療に有効である。
- 血液透析:
- 血液透析の過程で血液が凝固しないようにするために使用される。
- 手術時の抗凝固療法:
- 心臓手術や外科手術などで、手術中に血液が凝固しないようにヘパリンが使用される。
- 心臓カテーテル検査:
- 心臓カテーテル検査など、血管内での手技の際にもヘパリンが用いられる。
副作用
ヘパリンの使用にはいくつかの副作用が伴うことがある:
- ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT):
- 長期または高用量での使用により、免疫反応が引き起こされることがあり、血小板の数が減少することがある。この状態は血栓症のリスクを増加させる可能性がある。
- 出血:
- ヘパリンは強力な抗凝固作用を持っているため、過剰に使用すると出血のリスクが増加する。
投与方法
- 注射剤: ヘパリンは、皮下注射または静脈内注射によって投与される。
- 投与管理: 使用中は血液の凝固状態をモニタリングし、適切な投与量を調整することが重要である。




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