プロトロンビン(Prothrombin)は、血液凝固における重要な役割を果たす凝固因子IIとして知られるタンパク質である。肝臓で合成され、血漿中に存在する不活性型の酵素前駆体であり、活性化されるとトロンビンとなる。このトロンビンは、血液凝固カスケードを促進し、フィブリン形成を通じて血栓を作る役割を担う。
1. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 血液凝固因子(凝固因子II) |
| 合成部位 | 肝臓 |
| 活性化因子 | 活性化された凝固因子X(Xa)と因子V(Va)の複合体 |
| 役割 | トロンビンの前駆体 |
2. 生理的役割
2.1 トロンビンの前駆体
プロトロンビンは、血液凝固の過程で活性化され、トロンビンという酵素になる。このトロンビンが以下の働きをする:
- フィブリノーゲンをフィブリンに変換して血栓を形成。
- 血小板を活性化し、止血を促進。
2.2 血液凝固カスケードへの関与
プロトロンビンの活性化は、**凝固因子X(Xa)と因子V(Va)**が形成するプロトロンビナーゼ複合体によって行われる。この反応は、カルシウムイオン(Ca2+)とリン脂質の存在下で進行する。
3. プロトロンビンの合成とビタミンK依存性
プロトロンビンは肝臓で合成され、その過程でビタミンKが必要である。ビタミンKは、プロトロンビンのグルタミン酸残基にカルボキシル化を起こし、プロトロンビンがカルシウム結合能を持つようになる。これにより、プロトロンビンが凝固反応の部位に効率的に結合することが可能となる。
4. 臨床的意義
4.1 プロトロンビン時間(PT)
プロトロンビン時間は、血液凝固能力を評価するための検査である。特に以下の場合に利用されます:
- 凝固障害の診断:プロトロンビン欠乏症やビタミンK欠乏症。
- 抗凝固薬治療のモニタリング:ワルファリン治療中の患者。
4.2 プロトロンビンの異常
- プロトロンビン欠乏症
遺伝性または後天性の要因によるプロトロンビン不足で、出血傾向が増加する。
5. 臨床応用と治療
- ビタミンK投与:ビタミンK依存性プロトロンビンの合成を補助することで、出血傾向を改善。
- 抗凝固薬:ワルファリンやダビガトランはプロトロンビンの活性化を阻害し、血栓形成を防ぐ。




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