プラスミノーゲンは、血液中に存在する可溶性の前駆タンパク質で、血液凝固後に血栓を分解する役割を果たす。血栓が形成された後に、プラスミノーゲンは酵素であるプラスミンに変換され、血栓を溶解する(線溶)過程を開始する。このプロセスは、血管内で不必要な血栓を取り除くため、血流を回復させるために重要である。
プラスミノーゲンの役割
- 血栓溶解(線溶)
- プラスミノーゲンは血漿中に存在し、血栓が形成されるとその血栓内に取り込まれる。
- プラスミノーゲンは、プラスミンという酵素に変換されると、血栓を分解し始める。
- プラスミンは、フィブリン(血栓の主要成分)を分解し、血栓を溶かして血流を回復させる。
- フィブリン溶解
- プラスミンは、血栓内のフィブリン網を切断し、その構造を崩壊させる。これにより、血栓が溶け、血管内の通過を妨げていた障害物が除去される。
プラスミノーゲンの活性化
プラスミノーゲンは、そのままでは不活性ですが、さまざまな因子によって活性化される。
- 組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)
- tPA(tissue Plasminogen Activator)は、血管内皮細胞から分泌され、プラスミノーゲンを活性化してプラスミンに変換する。
- tPAは主に血管内皮で産生され、特に血栓形成があった部位に局所的に作用する。
- ウロキナーゼ(uPA)
- ウロキナーゼは、腎臓やその他の組織から分泌される酵素で、プラスミノーゲンを活性化することによって、血栓の溶解を手助けする。
プラスミノーゲンの異常
- プラスミノーゲン欠乏症
- 先天性プラスミノーゲン欠乏症は非常に稀な遺伝疾患で、プラスミノーゲンが欠乏しているために線溶作用が低下し、血栓が溶解されにくくなる。
- 後天性プラスミノーゲン欠乏症は、肝疾患、DIC(播種性血管内凝固症候群)や重篤な感染症などに関連することがある。
- 過剰な線溶
- プラスミノーゲンが過剰に活性化されると、血栓の早期の分解が進みすぎてしまい、出血しやすくなる可能性がある。血栓が必要以上に溶解されると、出血傾向が強くなることがあり、これは治療や管理が必要となる。
プラスミノーゲンの臨床的意義
- 線溶療法
- tPA(組織型プラスミノーゲンアクチベーター)は、脳梗塞や心筋梗塞などで血栓を溶解する治療に使用される。tPAを投与することにより、急性の血栓による障害を早期に解消し、組織の損傷を最小限に抑える。
- DIC(播種性血管内凝固症候群)
- DICのような血液凝固異常症では、血栓が不規則に形成され、同時に線溶も活性化される。プラスミノーゲンの異常な活性化が原因で、出血や血栓症が同時に発生することがある。
- 血栓症の予防・治療
- 血栓症の予防や治療において、プラスミノーゲンの活性化を促進する治療が利用されることがある。




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