フリーラジカル(free radicals)とは、不対電子を持つ不安定で反応性の高い分子や原子のことを指す。不対電子とは、電子が対(ペア)を形成していない状態の電子のことである。フリーラジカルはこの不安定な状態を解消しようとするため、他の分子や原子と激しく反応する。
代表的なフリーラジカルには、酸素分子から生成されるものが多く、これらは活性酸素種(Reactive Oxygen Species; ROS)とも呼ばれる。
フリーラジカルの特徴
- 不安定で反応性が高い
- 不対電子を持つため、他の分子や原子から電子を奪ったり、与えたりして安定化しようとする。この性質が原因で、生体内ではさまざまなダメージを引き起こすことがある。
- 種類が多い
- フリーラジカルには、酸素由来のもの(スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルなど)や窒素由来のもの(窒素ラジカルなど)がある。
- 短命
- フリーラジカルは非常に不安定であるため、通常は短期間で反応し、新しい化合物を形成する。
フリーラジカルの発生源
フリーラジカルは、生体内外のさまざまな要因によって発生する。
体内での発生
- 代謝活動
- ミトコンドリア内でのエネルギー代謝(電子伝達系)では、酸素を利用する過程で少量のフリーラジカル(スーパーオキシド)が生成される。
- 炎症
- 免疫系の炎症反応では、病原体を攻撃するために活性酸素種(ROS)が産生される。
- 酵素反応
- 一部の酵素反応でもフリーラジカルが副産物として生成されることがある。
外部要因
- 紫外線
- 紫外線(UV)により、皮膚細胞内でフリーラジカルが発生する。
- 放射線
- 放射線による分子の分解がフリーラジカルの生成を引き起こす。
- 大気汚染物質や化学物質
- 煙草の煙、排気ガス、化学物質などもフリーラジカルの発生を促進する。
フリーラジカルの影響
ポジティブな側面
フリーラジカルは、適量であれば生体内で重要な役割を果たす。
- 免疫反応
- フリーラジカルは、免疫細胞が病原体を攻撃する際に利用される。
ネガティブな側面
過剰に生成されたフリーラジカルは、細胞や組織にダメージを与えることがある。
- 酸化ストレス
- フリーラジカルが細胞膜、DNA、タンパク質を酸化することで損傷を与え、老化や疾患(動脈硬化、がん、神経変性疾患など)の原因となる。
- 細胞死
- フリーラジカルによる酸化ダメージが蓄積すると、アポトーシス(細胞の自然死)やネクローシス(壊死)を引き起こす。
フリーラジカルへの対策
フリーラジカルが過剰になるのを防ぐため、体内では抗酸化物質が活躍している。
抗酸化システム
- 酵素による防御
- スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
- カタラーゼ(CAT)
- グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)
- 抗酸化物質(非酵素)
生活習慣の改善
- バランスの取れた食事
- 抗酸化物質を多く含む食品(果物や野菜など)を摂取する。
- 禁煙
- 煙草はフリーラジカルを増加させる大きな要因となる。
- 紫外線対策
- 日焼け止めや防護服を使用することで紫外線によるフリーラジカルの発生を抑える。




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