フェニルアラニン（Phe、F：Phenylalanine）

フェニルアラニンは、タンパク質を構成するアミノ酸の1つで、必須アミノ酸に分類される。化学的には、ベンゼン環（芳香環）を持つ芳香族アミノ酸で、分子式は C₉H₁₁NO₂ である。

特徴と構造

• 分類：必須アミノ酸、芳香族アミノ酸
• 構造：
  • α-アミノ酸に分類され、中央の炭素にアミノ基（-NH₂）、カルボキシル基（-COOH）、水素原子、そしてベンゼン環を持つ側鎖が結合している。
• 極性：疎水性（非極性）の性質を持ち、タンパク質の疎水性コアを形成することが多い。

生理的役割

1. タンパク質の構成要素
   • フェニルアラニンは多くのタンパク質や酵素の構成成分となり、体の成長や修復に寄与する。
2. 神経伝達物質の前駆体
   • フェニルアラニンは、体内で代謝されて チロシン に変換され、以下の神経伝達物質の合成に関与する：
     • ドーパミン：快感や運動制御に関与
     • ノルアドレナリン（ノルエピネフリン）：ストレス応答や覚醒に寄与
     • アドレナリン（エピネフリン）：心拍数や血圧の調節
3. ホルモンの生成
   • チロシンを経て、甲状腺ホルモン（チロキシン）などの合成にも関与する。

栄養学的特徴

• 必須アミノ酸：
  • 人体では合成できないため、食事から摂取する必要がある。
  • 主に肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品、ナッツ類などに含まれている。

フェニルアラニンの代謝

1. チロシンへの変換：
   • 肝臓で酵素 フェニルアラニン水酸化酵素 (PAH) の働きにより、フェニルアラニンはチロシンに変換される。
2. 代謝異常：フェニルケトン尿症 (PKU)：
   • フェニルアラニン水酸化酵素の遺伝的欠損によりフェニルアラニンがチロシンに代謝されず、体内に蓄積する。これにより以下のような症状が現れます：
     • 精神発達遅滞
     • 神経障害
   • 治療としてフェニルアラニンの摂取制限が行われる。

応用と利用

1. 食品添加物：
   • フェニルアラニンは、人工甘味料 アスパルテーム の成分として利用されています。