フィブリンは、血液凝固の最終段階で形成される不溶性のタンパク質であり、血液の固まり(血栓)を作る主成分である。傷口や血管の損傷部位で血液が凝固する際に重要な役割を果たし、止血を助けるとともに、損傷部位を保護する。
フィブリン生成の仕組み
フィブリンは、血液凝固カスケード(凝固反応の連鎖)を経て生成される。この過程は以下のように進行する:
- フィブリノーゲンからフィブリンへの変化
- フィブリノーゲン(血漿中に存在する可溶性タンパク質)が、トロンビンという酵素の作用を受けることでフィブリンに変換される。
- トロンビンがフィブリノーゲンの一部を切断することで、不溶性のフィブリンモノマーが生成される。
- フィブリンモノマーの重合
- フィブリンモノマーは互いに結合して繊維状のフィブリンポリマーを形成する。
- これにより、血液中の細胞や血小板を捕捉しながら、損傷部位を埋める血栓が形成される。
- 安定化されたフィブリン網の形成
- 第XIII因子(13因子)が活性化されることで、フィブリンポリマー間に架橋が形成され、血栓が強固になる。
- この安定化により、血栓が損傷部位で崩れるのを防ぐ。
フィブリンの役割
- 止血
- 損傷部位に血栓を形成し、出血を止める。
- 傷口保護
- フィブリン網がバリアとして機能し、細菌や異物の侵入を防ぐ。
- 組織修復の促進
- フィブリンは、損傷部位に細胞を誘導し、組織の再生や修復を助ける足場として機能する。
フィブリンの分解(線溶)
止血後、フィブリン網は不要となるため、分解される。このプロセスを線溶(フィブリン分解)と呼ぶ。
- フィブリンは、プラスミンという酵素によって分解され、小さな断片(フィブリン分解産物、FDP)になる。
- 線溶系の適切な制御により、血管内で不要な血栓が形成されることを防ぐ。
フィブリンに関連する疾患
- 血栓症
- フィブリンが過剰に形成されると、血管内で血栓ができ、血流が阻害される可能性がある(例:深部静脈血栓症や肺塞栓症)。
- 出血性疾患
- フィブリン形成が不十分な場合、血液凝固が正常に進まず、出血が止まりにくくなる(例:フィブリノーゲン欠乏症、DIC:播種性血管内凝固症候群)。
- 線溶系の異常
- 線溶が過剰に進むと、形成された血栓が崩壊しやすくなり、止血が不十分になる場合がある。
臨床での重要性
- Dダイマー検査
- フィブリン分解産物の一種であるDダイマーは、血栓形成や線溶の過剰活性化の指標として利用される。
- 止血剤の使用
- 血友病などの出血性疾患では、フィブリン生成を補助する薬剤が使用される。




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