薬剤師国家試験出題項目

パーキンソン病治療薬

1 パーキンソン病

 パーキンソン病とは、黒質–線条体ドパミン神経経路の変性により線条体においてドパミンが減少し、コリン作動性神経が相対的に優位となり、スムーズに体を動かせなくなる神経変性疾患である。
症状が進行するとアドレナリン作動性神経やセロトニン作動性神経も変性し、ノルアドレナリン、セロトニンの量が低下する。
本疾患では、筋強剛(筋肉がこわばる)、安静時振戦(手足が震える、丸薬まるめ運動)、無動(動けない、動作が遅い)、姿勢反射障害(前かがみになりやすい、転倒しやすい)などの症状が認められる。

1)パーキンソン病の病態

2)パーキンソン症候群
安静時振戦、筋強剛、無動、姿勢反射障害などの症状をパーキソニズムといい、パーキンソン病以外でパーキソニズムを呈するものをパーキンソン症候群という。パーキンソン症候群には、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症などの変性疾患や薬剤性パーキソニズム、中毒性パーキソニズムなどの非変性疾患がある。

2 パーキンソン病治療薬の作用点

① 抹消よりレボドパを補う。
② 抹消においてレボドパからドパミンへの分解を触媒するドパ脱炭酸酵素を阻害する。
③ レボドパの分解に関わるCOMT(カテコールアミン−O−トランスフェラーゼ)を阻害する。
④ ドパミンの放出を促進させる。
⑤ 中枢においてドパミンの分解を触媒するMAOBを阻害する。
⑥ ドパミン受容体を直接刺激する。
⑦ アセチルコリン受容体を遮断し、ドパミンの量が低下することにより活性化されたアセチルコリンの活性を抑制する。

3 パーキンソン病治療薬

1)レボドパ+ドパ脱炭酸酵素阻害薬

・レボドパによりパーキンソン病で不足しているドパミンを脳内に補うことができる。
・レボドパは末梢でドパ脱炭酸酵素により分解されるため中枢移行性が低い。レボドパにドパ脱炭酸酵素阻害薬(カルビドパ水和物、ベンセラジド)を併用することでレボドパの末梢での分解が抑制され、中枢移行性が増大する。
・ドパミンD2受容体遮断薬により誘発される薬剤性パーキンソン症候群には無効である。
・副作用として、悪性症候群、悪心・嘔吐、食欲不振、起立性低血圧、心悸亢進、不整脈、不随意運動(ジスキネジアなど)、幻覚、妄想などが現れることがある。
・閉塞隅角緑内障に投与禁忌である。

●悪性症候群
 悪性症候群とは、レボドパを突然中断、抗精神病薬の投与により自律神経症状(発熱、発汗、尿閉など)、振戦、筋強剛、意識障害などが認められることである。原因は明確ではないが、ドパミン神経のバランスが崩れ誘発されると考えられている。

●wearing off現象
 レボドパ製剤を長期連用することにより薬効持続時間が短くなり、症状の日内変動が起こるwearing off現象が認められることがある。wearing off現象が現れた場合の対処法を以下に示す。

・レボドパの服用量や服用回数を増やす。
・COMT阻害薬であるエンタカポンとレボドパを併用し、レボドパの効果を長続きさせる。
・MAOB阻害薬であるセレギリンなどを併用し、レボドパの効果を長続きさせる。
・レボドバ製剤にプラミペキソールなどのドパミンアゴニストを追加投与する。
・アデノシンA2A受容体拮抗薬を追加投与する。

2)ドパミン受容体アゴニスト(麦角系)

① ブロモクリプチン ② ペルゴリド ③ カベルゴリン

・麦角アルカロイド誘導体であり、ドパミンD2受容体を直接刺激して抗パーキンソン作用を示す。
・副作用として悪心・嘔吐が現れやすい。
・心臓弁膜症を起こすことがあるので、服用中は定期的に心エコー検査を受ける必要がある。

3)ドパミン受容体アゴニスト(非麦角系)

① タリペキソール ② プラミペキソール ③ロピニロール ④ ロチゴチン

・ドパミンD2受容体を直接刺激して抗パーキンソン作用を示す。
・麦角系ドパミン受容体アゴニストに比べ、消化器症状が少ない。
・前兆のない突発性睡眠及び傾眠等が見られることがある。
・プラミペキソール、ロチゴチンは特発性レストレスレッグス症候群に用いられる。

●レストレスレッグス症候群
 むずむず脚症候群とも言われ、脚がむずむずするなどの異常感覚と脚を動かしたいという衝動が主な症状として現れる感覚運動障害のひとつである。

4)COMT阻害薬

① エンタカポン

・末梢でのCOMT(カテコール–O–メチルトランスフェラーゼ)を阻害し、レボドパの分解を抑制、脳内移行量を増大させる。
・レボドパ+ドパ脱炭酸酵素阻害薬との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing off現象)の改善に用いられる。

5)MAO–B阻害薬

① セレギリン ② ラサギリン

・MAOB(B型モノアミン酸化酵素)を阻害し、線条体シナプス間隙のドパミン濃度を高めることにより抗パーキンソン病作用を示す。
・セレギリンは覚せい剤原料に指定されている。

6)抗コリン薬

① トリヘキシフェニジル ② ビペリデン ③ プロフェナミン

・ドパミンの欠乏に伴い、相対的に亢進しているアセチルコリン神経の作用を抑制し、ドパミンとアセチルコリンのバランスを調節する。
・中枢性抗コリン作用により幻覚、錯乱、眠気、記憶障害などが現れることがある。また、末梢性抗コリン作用により口渇、便秘、排尿障害、悪心・嘔吐などが現れることがある。
・閉塞隅角緑内障、重症筋無力症に用いることができない(投与禁忌)。

7)ドパミン遊離促進薬

① アマンタジン

・線条体におけるドパミン遊離促進作用により抗パーキンソン病作用を示す。
・A型インフルエンザ感染症に効果がある。
・脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善に用いられる。
・てんかん患者、けいれん素因のある患者などでは、発作の誘発・悪化させることがある。

8)レボドパ賦活薬

① ゾニサミド

・機序は不明だが、MAO–B阻害作用によりレボドパの作用を増強させると考えられている。
・抗てんかん薬としても用いられる。
・発汗減少により体温が上昇することがあるため、特に夏季は体温上昇に注意する必要がある。

9)アデノシンA2A受容体拮抗薬

① イストラデフィリン

・線条体と淡蒼球においてアデノシンA2A受容体へのアデノシンの結合を阻害し、GABA神経の過剰興奮を抑制する。
・レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるwearing off現象の改善に用いられる。

10)ドロキシドパ

 

・ノルアドレナリンの前駆物質であり、血液脳関門を通過し脳内に移行することでノルアドレナリンに変更され効果を示す。
・パーキンソン病におけるすくみ足、立ちくらみに用いられる。
・副作用として、悪心_嘔吐、幻覚、妄想が現れることがある。

◇関連問題◇
第97回問210〜211、第98回問30、第100回問250〜251、第102回問157、第102回問270〜271、第104回問250〜251

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