トランスポーター

輸送体、輸送担体は、トランスポーターと言われ、細胞膜を隔てた細胞内外の化合物の移動を促進する膜タンパク質であり、促進拡散や能動輸送などの担体介在輸送に関与する。生理的物質や薬物の細胞内への取込み、あるいは細胞外への排出に働き、細胞内外の物質量を調節している。トランスポーターは、あらゆる場所(小腸上皮細胞、肝細胞、腎尿細管上皮細胞、血液脳関門など)に存在しており、吸収、組織移行、体外への排泄と密接に関わっているため、薬物の体内動態を左右する重要な因子となる。

1 トランスポーターの分類

トランスポーターは機能による由来する名称と、各トランスポータータンパク質を特定する遺伝子名を有する。トランスポータータンパク質を特定する遺伝子名による分類については、SLC(solute carrier)トランスポーター群とABC(ATP binding cassette)トランスポーター群に分類される。次に代表的なトランスポーターについてまとめる。

1)SGLT1,2

 SGLTは、グルコースを輸送する担体であり、SLCトランスポーターに分類される。SGLTは二次性能動輸送によりグルコースを輸送し、その駆動力はNaである。SGLT1は小腸、腎臓においてグルコースの取り込みに関与し、SGLT2は腎臓においてグルコースの取り込みに関与している

2)PEPT1,2

 PEPTは、ペプチドを輸送する担体であり、SLCトランスポーターに分類される。PEPTは二次性能動輸送により(ジ、トリ)ペプチドを輸送し、その駆動力はHである。PEPTはペプチド類似構造を有する薬物の輸送にも関与している。PEPTにより輸送される代表的な薬物には、セファレキシン、カプトプリル、バラシクロビルなどがある。

3)OATP2B1,1B1,1B3

 OATPは、有機アニオンを輸送する担体であり、SLCトランスポーターに分類される。OATP には、OATP2B1、OATP1B1、OATP1B3があり、OATP1B1はスタチン系薬物の肝臓への取り込みに関与している。 

4)OAT1,2,3

 OATは、有機アニオンを輸送する担体であり、SLCトランスポーターに分類される。OATには、OAT1,2,3があり、それぞれ血管側に存在しており、肝細胞や腎細胞の薬物の取り込みに関与している。

)OCT1,2,3

 OATは、有機カチオンを輸送する担体であり、SLCトランスポーターに分類される。OCTには、OCT1,2,3があり、それぞれ血管側に存在しており、肝細胞や腎細胞の薬物の取り込みに関与している。

)MDR1

 MDR1は、P糖タンパク質のことであり、ABCトランスポーターに分類される。MDR1は、小腸上皮細胞、肝臓細胞、腎尿細管、血液脳関門に存在しており、一次性能動輸送(ATPを直接利用する輸送)により、様々な薬物を輸送する。MDR1により輸送される代表的な薬物には、抗悪性腫瘍薬、Ca拮抗薬、ジゴキシン、シクロスポリン、タクロリムス、キニジン、ダビガトラン、アリスキレン、クラリスロマイシン、イトラコナゾールなどがある。

7)MRP2,4

 MRPは、ABCトランスポーターに分類され、一次性能動輸送により多くの薬物を輸送する。MRP2は、胆汁中や小腸管腔側への薬物の輸送に関与している。

)BCRP

 BCRPは、ABCトランスポーターに分類され、一次性能動輸送により多くの薬物を輸送する。

2 トランスポーターの役割 

1)消化管でのトランスポーターの役割

消化管では、グルコースやペプチドの取り込みに関与するSGLT1、PEPT1や薬物を小腸上皮細胞から消化管管腔へ排泄するP糖タンパク質が発現している。

SGLT1は、消化管管腔と小腸上皮細胞の間に生じるNaの濃度差を駆動力としてグルコースを細胞内へ取り込み、PEPT1は、消化管管腔と小腸上皮細胞の間に生じるHの濃度差を駆動力としてペプチドを細胞内へ取り込む。また、P糖タンパク質は、一次性能動輸送により小腸上皮細胞内の薬物を消化管へ分泌している。

(1)Na勾配を利用したグルコースの輸送

小腸上皮細胞の血管側にはNa,K−ATPaseが発現しており、Na,K−ATPaseが細胞内のNaを血液中へ移行させるため、小腸上皮細胞内のNa濃度は低い状態が保たれている。それにより消化管管腔との間にNaの濃度差が認められる。
小腸上皮細胞と消化管管腔の間にNa勾配が生じると、SGLT1の消化管管腔側からのNaの取り込みが促進され、それとともにグルコースの取り込みが促進される。
このように同じ方向に物質が輸送されることを共輸送という。

(2)H勾配を利用したペプチドの輸送

小腸上皮細胞の血管側にはNa,K−ATPaseが発現しており、Na,K−ATPaseが細胞内のNaを血液中へ移行させるため、小腸上皮細胞内のNa濃度は低い状態が保たれている。それにより消化管管腔との間にNaの濃度差が認められる。
小腸上皮細胞と消化管管腔の間にNa勾配が生じると、H,Na逆輸送系により細胞内のHが消化管管腔への排泄されやすくなり、H勾配が生じる。
小腸上皮細胞と消化管管腔の間にH勾配が生じると、PEPT1の消化管管腔側からのHの取り込みが促進され、それとともにペプチドの取り込みが促進される。

)肝臓でのトランスポーターの役割

肝臓では、肝細胞に取り込まれた薬物が一部胆汁中に排泄されており、薬物の肝への取り込み、胆汁中への分泌には、トランスポーターが関与している。薬物の肝への取り込みにはOATP1B1、OATP1B3、およびOAT2やOTC1が関与しており、また、薬物の胆汁中への排泄には、P糖タンパク質、BCRP、MRP2が関与している。

)腎臓でのトランスポーターの役割

腎臓では、腎臓の尿細管上皮細胞側には、OAT1、OAT3、OCT2が発現しており、それらにより腎臓の尿細管上皮細胞に薬物が取り込まれる。腎臓の尿細管上皮細胞に取り込まれた薬物は、尿細管側に存在するP糖タンパク質やBCRP、MRP2/4により尿中に排泄される。
また、腎臓の尿細管上皮細胞にはSGLT1、2が発現しており、尿から血液中へのグルコースの再吸収に関与している。

)血液脳関門、胎盤関門でのトランスポーターの役割

血液脳関門や胎盤関門には、P糖タンパク質やBCRPが発現しており、脳内や胎児への薬物の移行を制御している。

 

◇関連問題◇

第97回問42、第97回問170、第100回問44、第103回問166、第104回問42