薬剤師国家試験出題項目

タンパク結合の測定

1 タンパク結合測定法

タンパク結合率が薬物の移行性に大きく影響を与えることから、薬物の体内動態を考えるに当たって、タンパク結合能を測定する必要がある。タンパク結合測定法には、平衡透析法や限外濾過法がある。

1)平衡透析法

平衡透析法は、半透膜で隔てた二つのセルの一方に血漿タンパク質を入れ、他方には、同じ容積の緩衝液を加える。その際、薬物はタンパク質が入った溶液側または緩衝液側のいずれかに添加する。

この溶液を平衡状態になるまで振とうし、透析が平衡に達した後、両セル中の薬物濃度を測定する。平衡状態では、非結合型薬物濃度は等しいため、緩衝液側からは非結合型薬物濃度、タンパク質側からは、結合型薬物濃度、遊離タンパク質濃度を求めることができる。

血漿タンパク質と薬物が1:1で結合する場合、結合定数Kは以下の式より求めることができる。よって、平衡透析法により、[Df]:遊離型薬物濃度、[DP]:結合型薬物濃度、[Pf]:遊離型血漿

タンパク質濃度を求めることができれば、その結果より、結合定数Kを求めることが可能となる。

●例題
ある薬物のタンパク質に対する結合定数を、半透膜の袋を用いた平衡透析法により測定した。袋の内液中のタンパク質濃度を0.8 mmol/L、外液中の薬物初濃度を1.6 mmol/Lとし、平衡状態に達したときの外液中の薬物濃度を測定したところ、0.5 mmol/Lであった。薬物の結合定数K(L/mmol)を計算せよ。ただし、タンパク質1分子に対して薬物が1分子結合するとする。また、内液及び外液の容積はともに10 mLで、薬物もタンパク質も容器や膜には吸着せず、変性や分解しないものとする。

●解答
タンパク質1分子に対して薬物が1分子結合することから、結合定数は以下の式で求められる。

平衡到達後、内液中の遊離型薬物濃度と外液中の遊離型薬物濃度は等しくなるため、内液中の遊離薬物濃度は0.5 mmol/Lとなる。また、薬物の全濃度は1.6mmol/Lであるため、結合型薬物濃度は薬物の全濃度と遊離型薬物濃度の差である0.6 mmol/L(1.6mmol/L-0.5mmol-0.5mmol)となる。
タンパク質1分子に対して薬物が1分子結合することから、結合型タンパク質濃度は結合型薬物濃度と等しくなる。そのため、遊離型のタンパク質については、0.8 mmol(全タンパク質濃度)-0.6 mmol/L=0.2 mmol/Lとなる。
これらのことからこの薬物の結合定数Kは以下のように求めることができる。

2)限外濾過法

限外濾過法では、タンパク質は通さないが、薬物が自由に透過できる小孔を有する限外濾過膜を用いて、遠心分離により非結合型薬物画分を得る方法である。

2 タンパク結合解析法

一般に、血漿タンパク質と薬物分子の結合は質量保存の法則に従う可逆反応であり、タンパク質1分子に薬物1分子が結合する場合、両者の結合は次式で表される。

総タンパク質濃度を[Pt]([Pt]=[Pf]+[DP])、総タンパク質濃度当たりの結合型薬物濃度の割合をrとすると、

タンパク質1分子当たりに、同種のn個の結合部位があるとすると、次のラングミュア式が得られる。

ラングミュア式をもとに縦軸にr、横軸に[Df]をプロットすると、直接プロット(ラングミュアプロット)が得られる。

ラングミュア式を変形することにより、スキャチャード式、両逆数プロット式を導くことができ、また、スキャチャード式、両逆数プロット式より、スキャチャードプロット、両逆数プロットを得ることができる。

スキャチャードプロット、両逆数プロットの縦軸切片、横軸切片、傾きより、結合定数K、結合部位数nを得ることができる。

3 タンパク置換

タンパク置換には、競合的置換と非競合的置換があり、それぞれ以下に示す特徴を有する。

1)競合的置換

競合的置換は、同一の部位に結合する薬物の間で認められる。
例:ワルファリンとインドメタシンの併用
ワルファリンとインドメタシンはそれぞれアルブミン薬物結合部位サイトⅠに結合するため、両薬物を併用すると、サイトⅠの結合に対して競合現象が認められる。

ワルファリン投与時にインドメタシンを投与し、競合現象が認められた場合、サイトⅠの数は変化しないため、結合部位数nは変化しないが、ワルファリンの結合のしやすさは低下する(結合定数Kは低下する。)。

2)非競合的置換

非競合的置換は、異なる部位に結合する薬物の間で認められる。
例:ワルファリンとクロロフェノキシイソ酪酸の併用
ワルファリンとクロロフェノキシイソ酪酸はそれぞれアルブミン薬物結合部位サイトⅠとサイトⅡに結合する。両薬物を併用すると、非競合的置換が認められる。

ワルファリン投与時にクロロフェノキシイソ酪酸を投与すると、タンパク質の変性が起こり、サイトⅠの数が減少するため、結合部位数nは低下する。ただ、変性により消失しなかったサイトⅠとワルファリンとの親和性は変化しないため、結合定数Kは変化しない。

◇関連問題◇
第97回問43、第99回問168、第102回問166、104回問165

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