グリシン(Glycine, Gly, G)は、化学式 NH₂CH₂COOH で表されるアミノ酸の一種で、最も単純な構造を持つ非極性の中性アミノ酸である。グリシンは、タンパク質を構成する20種類の標準アミノ酸の一つであり、動植物や微生物の体内に広く存在する。
1. 基本情報
| 性質 | 内容 |
|---|---|
| 化学名 | アミノ酢酸(Aminoacetic Acid) |
| 化学式 | NH₂CH₂COOH |
| 分子量 | 75.07 g/mol |
| IUPAC名 | Glycine |
| 分類 | 中性アミノ酸(側鎖が非極性) |
| 外観 | 無色の結晶または白色の粉末 |
| 溶解性 | 水に可溶、エタノールにはわずかに溶ける |
2. 構造的特徴
グリシンの側鎖は水素原子1つのみで構成されており、他のアミノ酸に比べて非常に単純である。このため、立体障害が少なく、タンパク質の構造において柔軟な役割を果たす。また、グリシンはキラル中心を持たないため、鏡像異性体が存在しない。
3. 生体内での役割と機能
3.1 タンパク質の構成要素
グリシンは、タンパク質を構成するアミノ酸の一つとして、さまざまな生体内反応に関与する。特に、コラーゲンなどのタンパク質中で高頻度に見られる。
3.2 生化学的役割
- 神経伝達物質
グリシンは、抑制性神経伝達物質として脊髄や脳幹に存在し、神経の興奮を抑制する働きを持ちます。グリシン受容体を介して作用し、過剰な神経興奮を抑制する。 - 代謝の中間体
グリシンは、以下の物質の合成において重要な前駆体となります:- ヘム(赤血球のヘモグロビンに含まれる成分)
- クレアチン(エネルギー代謝に関与)
- グルタチオン(抗酸化作用を持つトリペプチド)
- プリン塩基(DNAやRNAの構成要素)
- 解毒作用
グリシンは、肝臓での解毒反応(グリシン抱合)に関与し、毒性物質を無毒化する。





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