薬剤師国家試験出題項目

キレート滴定

1 容量分析用標準液

 キレート滴定では、標準液として下記のものが用いられる。

EDTAは、1分子内に4個のカルボキシ基と2個の窒素原子を配位原子にもつ六座配位子であり、金属イオンと1:1で結合し、安定なキレートを形成する。

EDTA液を金属イオンを含む医薬品に滴下すると、1:1で結合し、安定なキレートを形成することから、金属イオンを含む医薬品の定量が可能となる。キレート滴定における逆滴定では、金属イオンとEDTAをあらかじめ反応させておき、過剰なEDTAを金属を含む標準液により滴定することにより、定量することが可能となる。キレート滴定においては、逆滴定用の標準液として、塩化マグネシウム液や酢酸亜鉛液が用いられる。

<標準試薬について>
EDTAを標定する際には、標準試薬として「亜鉛」が用いられる。

2 金属指示薬

 金属指示薬は、金属イオンとキレートを形成すると変色するため、キレート滴定の終点検出に用いられる。キレート滴定に用いられる主な金属指示薬を以下に示す。

金属指示薬については、目的金属イオンとEDTAとのキレート形成に最適なpHで変色する指示薬を選択する必要がある。

3 医薬品の定量

<例:塩化カルシウム水和物(CaCl2・2H2O:147.01)の定量>

本品約0.4gを精密に量り、水に溶かし、正確に200mLとする。この液20mLを正確に量り、水40mL及び8mol/L水酸化カリウム試液2mLを加え、更にNN指示薬0.1 gを加えた後、直ちに0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液で滴定する。ただし、滴定の終点は液の赤紫色が青色に変わるときとする。

0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1 mL =2.940 mg CaCl2・2H2O

・対応量を計算する。
①:カルシウムイオンとEDTAの反応について確認する。
EDTAは金属イオンと1:1で反応し、カルシウムイオン1molに対して1molのEDTAが反応するため、塩化カルシウム1molに対して1molのEDTAが反応する。

②:対応数について確認する。
塩化カルシウムとEDTAは1:1で反応することから、対応数(目的成分1molに対して、反応する標準液のmol数)は1となる。

③:標準液1mLに対応する目的成分の物質量を求める。
0.02mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム1mLに対する塩化カルシウム水和物の物質量=(0.02mol/L×1mL÷1)=0.02mmoL

④:対応量を求める。
対応量=0.02mmoL×147.01 g/mol=2.940(mg)

・滴定の終点を検出する際の色について
1)滴定前
NNとカルシウムが結合している
→NNが結合型で存在するため、赤紫色
2)滴定中
NN指示薬と結合していたカルシウムとEDTAが結合
→NNが結合型から遊離型になるため、赤紫色から徐々に青色へ変色
3)滴定終点
NN指示薬と結合していたカルシウムが全てEDTAと結合する
→NNが遊離型で存在するため、青色へ変色

<例:アスピリンアルミニウム中のアルミニウムの定量>

本品約0.4gを精密に量り、水酸化ナトリウム試液10mLに溶かし、1mol/L塩酸試液を滴加して pHを約1とし、更にpH 3.0の酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液20 mL及びCu−PAN試液0.5mLを加え、煮沸しながら、0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液で滴定する。ただし、滴定の終点は液の色が赤色から黄色に変わり、1分間以上持続したときとする。同様の方法で空試験を行い、補正する。

0.05 mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1mL =1.349 mg Al

・対応量を計算する。
①:アルミニウムイオンとEDTAの反応について確認する。
EDTAは金属イオンと1:1で反応するため、アルミニウムイオン1molに対して1molのEDTAが反応する。

②:対応数について確認する。
アルミニウムとEDTAは1:1で反応することから、対応数(目的成分1molに対して、反応する標準液のmol数)は1となる。

③:標準液1mLに対応する目的成分の物質量を求める。
0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム1mLに対するアルミニウムの物質量=(0.05mol/L×1mL÷1)=0.05mmoL

④:対応量を求める。(Alの分子量:26.98)
対応量=0.05mmoL×26.98g/mol=1.349(mg)

・滴定の終点を検出する際の色について
1)滴定前
Cu−PANと遊離アルミニウムが存在している
→Cu−PANが結合型で存在するため、赤色
2)滴定中
EDTAと遊離アルミニウムが結合する
3)滴定終点
遊離アルミニウムが全てEDTAと結合し、Cu−PANよりCuが遊離する
→Cu−PANがPAN(遊離型)になるため、赤色から黄色に変色

<例:乾燥水酸化アルミニウムゲル中の酸化アルミニウムの定量>
本品約2gを精密に量り、塩酸15mLを加え、水浴上で振り混ぜながら30分間加熱し、冷後、水を加えて正確に500mLとする。この液20mLを正確に量り、0.05 mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液30mLを正確に加え、pH4.8の酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液20mLを加えた後、5分間煮沸し、冷後、エタノール(95) 55mLを加え、0.05mol/L酢酸亜鉛液で滴定する(指示薬:ジチゾン試液2mL)。ただし、滴定の終点は液の淡暗緑色が淡赤色に変わるときとする。同様の方法で空試験を行う。

0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム液1mL =2.549 mg Al2O3

・対応量を計算する。
①:アルミニウムイオンとEDTAの反応について確認する。
EDTAは金属イオンと1:1で反応し、アルミニウムイオン1molに対して1molのEDTAが反応するため、酸化アルミニウム1molに対して2molのEDTAが反応する。

②:対応数について確認する。
酸化アルミニウムとEDTAは1:2で反応することから、対応数(目的成分1molに対して、反応する標準液のmol数)は2となる。

③:標準液1mLに対応する目的成分の物質量を求める。
0.05mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム1mLに対する酸化アルミニウムの物質量=(0.05mol/L×1mL÷2)=0.025mmoL

④:対応量を求める。(Al2O3の分子量:101.96)
対応量=0.025mmoL×101.96 g/mol=2.549(mg)

・滴定の終点を検出する際の色について
1)逆滴定前
過剰のEDTAとジチゾンが存在している
→ジチゾンが遊離型で存在するため、淡暗緑色
2)滴定中
EDTAと酢酸亜鉛に含まれる亜鉛が結合する
3)滴定終点

EDTAが完全に消費され、余った亜鉛とジチゾンが結合する
→ジチゾンが結合型で存在するため、淡暗緑色から淡赤色に変色

◇関連問題◇
第87回問32、第94回問32

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