キシレン(Xylene)は、化学式 C₆H₄(CH₃)₂ で表される芳香族炭化水素で、ベンゼン環に2つのメチル基が結合した化合物である。無色透明で揮発性が高く、特徴的な甘い芳香臭を有している。構造異性体としてオルト(o-)、メタ(m-)、パラ(p-)の3種類が存在し、これらの混合物として使用されることもある。
1. 基本特性
| 性質 | 内容 |
|---|---|
| 化学名 | キシレン(Xylene) |
| 化学式 | C₆H₄(CH₃)₂ |
| 分子量 | 106.16 g/mol |
| 溶解性 | 水に不溶、アルコールやエーテルに可溶 |
| 外観 | 無色の液体 |
| 臭い | 甘い芳香臭 |
2. キシレンの用途
2.1 溶媒としての用途
- 塗料・インク・接着剤
キシレンは、揮発性の高い有機溶媒として、塗料やインク、接着剤の製造や希釈に使用される。 - 工業溶媒
ゴム、樹脂、ワックス、脂肪などを溶解する用途に用いられる。
2.2 化学品の原料
- プラスチックやポリエステルの原料
キシレンは、テレフタル酸やポリエステル樹脂の製造における重要な中間体である。 - 医薬品や農薬の合成
キシレンを中間体として利用する場合がある。
2.3 その他の用途
- 燃料添加剤
ガソリンのオクタン価を向上させるための添加剤として使用される。 - 実験室での利用
脂肪やワックスの抽出や、組織固定や染色の洗浄溶媒として利用される。
3. キシレンの構造と異性体
キシレンには3種類の構造異性体が存在します:
- オルト(o-)キシレン: メチル基がベンゼン環上で隣接する位置(1位と2位)に配置。
- メタ(m-)キシレン: メチル基が1位と3位に配置。
- パラ(p-)キシレン: メチル基が1位と4位に配置。
異性体により物理的性質が若干異なりますが、化学的性質は類似している。
4. キシレンの製造方法
- 石油化学工業
キシレンは、主にナフサの接触改質や原油の分留過程で得られる芳香族化合物である。
5. 健康や環境への影響
5.1 健康への影響
キシレンの蒸気や液体に長期間さらされると、有害な影響を及ぼす可能性がある。
- 吸入時の影響: 頭痛、めまい、吐き気、呼吸困難を引き起こすことがある。
- 皮膚や目への影響: 刺激性を示し、長期的な接触は皮膚の乾燥や炎症を引き起こす場合がある。
- 中枢神経系への影響: 高濃度の吸入は意識喪失や神経障害を引き起こす可能性がある。
- 生体内で代謝され、最終的にグリシン抱合を受けて、メチル馬尿酸として排泄される。
5.2 環境への影響
- キシレンは、揮発性有機化合物(VOC)の一種である。
- 水質汚染や土壌汚染の原因にもなり、生態系に悪影響を与える可能性がある。
6. 安全対策
6.1 取り扱い時の注意
- 揮発性が高く、引火性があるため火気の近くで使用しない。
- 換気の良い場所で作業を行う。
- 密閉容器で保管し、漏れや蒸発を防ぐ。
6.2 個人防護
- 防毒マスクやゴーグル、手袋を着用する。
- 皮膚や目に接触した場合、速やかに大量の水で洗い流す。
6.3 廃棄
- キシレンを廃棄する際は、適切な方法で処理し、環境汚染を防ぐ。





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