カルニチン(Carnitine)は、脂肪酸の代謝に重要な役割を果たす化合物であり、脂肪をエネルギーに変換する過程をサポートする。カルニチンはアミノ酸であるリジンとメチオニンを材料として体内で合成され、特に肝臓や腎臓で生成される
1. カルニチンの化学的特徴
- 化学式: C₇H₁₅NO₃
- 構造: 4級アンモニウム塩を持つ水溶性の分子。
- 形態: L-カルニチン(生理活性を持つ)とD-カルニチンの2つの異性体がありますが、生体内ではL-カルニチンが使用される。
2. カルニチンの主な役割
カルニチンは、主に脂肪酸の代謝とエネルギー生成に関与している。
2.1 脂肪酸の輸送
- 長鎖脂肪酸(LCFA)は、そのままではミトコンドリアのマトリックスに入ることができない。
- カルニチンは、長鎖脂肪酸と結合してアシルカルニチンを形成し、これをミトコンドリア内膜を通じて輸送する。
- このプロセスを介して脂肪酸がミトコンドリアに取り込まれ、β酸化によってATPが生成される。
2.2 エネルギー代謝の調節
- カルニチンは、脂肪酸のβ酸化によるエネルギー生成をサポートすることで、グルコースの使用を節約する。
- これにより、特に絶食状態や運動中に重要なエネルギー供給源として機能する。
2.3 アンモニア解毒の補助
- カルニチンは、代謝物の除去やアンモニアの解毒にも関与するとされている。
3. カルニチンの生合成と供給源
カルニチンは体内で合成されるほか、食品からも摂取可能である。
3.1 生合成
3.2 食品中のカルニチン
- 含有量が多い食品:
- 赤身の肉(特に牛肉や羊肉):カルニチンを豊富に含む。
- 植物性食品: 一部の植物性食品にもわずかに含まれますが、動物性食品に含量が少ない。
4. 健康への効果
カルニチンは健康維持や特定の疾患予防に効果が期待されている。
4.1 脂肪燃焼の促進
- 脂肪酸の代謝を助けるため、体脂肪を減らし、体重管理に寄与する可能性がある。
4.2 運動パフォーマンスの向上
- 筋肉へのエネルギー供給をサポートし、運動時の疲労軽減や回復促進が期待される。
4.3 心臓機能の改善
- 心筋でのエネルギー生成を促進し、虚血性心疾患や心不全の補助療法として使用されることがある。
4.4 加齢に伴う機能低下の予防
- カルニチンはミトコンドリア機能を改善する作用があり、加齢に伴う認知機能や筋力の低下を予防する可能性がある。
5. 医療分野での利用
カルニチンは以下のような病態に対して治療や補助療法として利用されている。
5.1 カルニチン欠乏症
- 原因: 先天性疾患、肝疾患、腎不全、特定の薬剤(例: バルプロ酸)によるカルニチンの低下。
- 症状: 筋力低下、疲労、低血糖、心筋障害など。
- 治療: 補充療法としてL-カルニチンが投与されます。




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