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エイズウイルス(HIV: Human Immunodeficiency Virus)

エイズウイルス(HIV: Human Immunodeficiency Virus)は、ヒト免疫不全ウイルスとも呼ばれ、後天性免疫不全症候群(AIDS: Acquired Immunodeficiency Syndrome)を引き起こすウイルスである。HIVは、免疫系の中核を担うCD4陽性Tリンパ球(CD4細胞)を標的として感染し、それを破壊することで、宿主の免疫機能を低下させる。これにより、感染者はさまざまな感染症や悪性腫瘍に対する抵抗力を失い、最終的にAIDSを発症する。

HIVの特徴

  1. ウイルスの分類
    • RNAウイルスの一種で、レトロウイルス科に分類されます。
    • 逆転写酵素を持ち、RNAをDNAに変換し宿主細胞のゲノムに組み込むことで、長期的な感染を維持する。
  2. 構造
    • エンベロープウイルスであり、脂質二重膜のエンベロープを持ちます。
    • 表面にはgp120およびgp41というタンパク質が存在し、これらが宿主細胞のCD4受容体と結合する。
    • 内部にはRNAゲノム、逆転写酵素、プロテアーゼ、インテグラーゼが含まれている。
  3. 感染力
    • 血液、精液、膣分泌液、母乳を介して感染する。
    • 日常生活での接触や空気感染では感染しない。

感染経路

  1. 性行為
    • 性的接触による感染が最も一般的です。特に無防備な性行為では感染リスクが高まる。
  2. 血液接触
    • HIVに汚染された注射針の共有、不適切な輸血などによる感染。
  3. 母子感染
    • 妊娠中、出産時、または授乳を通じて母親から子供に感染することがある。

HIV感染の進行段階

  1. 急性期
    • 感染後2~4週間で、発熱、喉の痛み、リンパ節腫脹、発疹などインフルエンザ様の症状が現れる場合がある。
  2. 潜伏期
    • 無症状期間が数年から10年以上続きますが、ウイルスは体内で活発に増殖し、CD4細胞が徐々に減少する。
  3. AIDS発症
    • CD4細胞数が大幅に減少し、日和見感染症(カリニ肺炎、サイトメガロウイルス感染症など)や悪性腫瘍(カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫など)を引き起こす。

診断と治療

  1. 診断
    • 抗体検査: 血液中のHIV抗体を検出する検査が一般的。
    • 抗原検査: ウイルス自体の抗原(p24抗原)を検出する方法。
    • PCR検査: ウイルスRNAを検出する高感度の検査。
  2. 治療
    • 抗レトロウイルス療法(ART):
      複数の抗HIV薬を組み合わせてウイルスの増殖を抑制し、免疫機能を維持する。治療により、HIVを体内から完全に排除することは難しいものの、感染者は長期的な健康を維持できる。

HIV感染予防

  1. コンドームの使用
    • 性的接触を通じた感染を防ぐ最も効果的な方法。
  2. 曝露前予防(PrEP)
    • 感染リスクが高い人が抗HIV薬を服用することで、感染を予防する。
  3. 曝露後予防(PEP)
    • 感染の可能性がある状況(例: 針刺し事故)から72時間以内に抗HIV薬を服用することで感染リスクを低下させる。
  4. 血液管理
    • 安全な輸血と針の使い捨てを徹底する。
  5. 母子感染予防
    • 妊婦への治療、帝王切開の選択、人工栄養の導入などで予防可能。

社会的な課題

HIV/AIDSには依然として偏見や差別が伴う場合がある。しかし、近年の治療法の進歩により、適切な治療を受ければHIV感染者は非感染者と同じように健康で長い生活を送ることが可能である。

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