インスリン(Insulin)は、膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌されるホルモンで、血糖値を調節する重要な役割を担う。タンパク質ホルモンであるインスリンは、体内のグルコース(ブドウ糖)の代謝を制御し、エネルギー供給や脂肪の蓄積、タンパク質の合成に関与している。
1. 基本情報
- 分子構造: インスリンは、A鎖(21個のアミノ酸)とB鎖(30個のアミノ酸)からなるペプチドホルモンで、これらは2本のジスルフィド結合でつながっている。
- 生成場所: 膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞。
- 分泌刺激: 血糖値の上昇(食事後のグルコース吸収)や特定のホルモンが分泌を促進する。
2. 役割と作用機構
インスリンの主な役割は、血糖値を適正範囲内に維持することである。
2.1 グルコースの細胞内取り込み
- インスリンは、細胞表面のインスリン受容体に結合し、グルコース輸送体(GLUT4)を活性化する。
- 上記の作用により、特に筋肉細胞や脂肪細胞でのグルコースの取り込みが促進され、血糖値が低下する。
2.2 グリコーゲン合成の促進
- 肝臓や筋肉でグリコーゲン合成酵素を活性化し、余剰のグルコースをグリコーゲンとして貯蔵する。
2.3 脂肪合成の促進
- 脂肪細胞では、グルコースから脂肪酸を合成し、脂肪として蓄積する。
- 脂肪分解を抑制する作用も示す。
2.4 タンパク質合成の促進
- 筋肉や他の組織でタンパク質合成を促進し、分解を抑制する。
3. 分泌の調節
インスリン分泌は、主に血糖値に依存しているが、他の要因も影響を与える。
- 血糖値: 血糖値が上昇すると、インスリン分泌が刺激される。
- ホルモン: 消化管ホルモン(インクレチンなど)や副交感神経の刺激が分泌を促進する。
- 神経系: 自律神経(副交感神経や交感神経)の活動が影響する。
- その他: アミノ酸や脂肪酸の濃度上昇も分泌を刺激する。
4. インスリン関連の疾患
インスリンの分泌や作用に異常が生じると、以下のような疾患が発生する。
4.1 糖尿病
- 1型糖尿病: インスリンを分泌するβ細胞が自己免疫によって破壊され、インスリンが欠乏する疾患。
- 2型糖尿病: インスリン抵抗性(細胞がインスリンに反応しにくくなる)やインスリン分泌不足が原因。
4.2 低血糖
- インスリン分泌過剰や、インスリン注射の過剰投与により、血糖値が異常に低下する状態。
4.3 メタボリックシンドローム
- インスリン抵抗性が中心となり、肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症が併存する状態。
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