アラキドン酸は、炭素数20の不飽和脂肪酸で、化学式は C20H32O2 です。4つの二重結合を持つ多価不飽和脂肪酸で、ω-6脂肪酸に分類される。体内では重要な生理活性物質の前駆体として働き、細胞膜の構成成分としても重要な役割を果たす。
特徴と構造
- 化学構造: 炭素鎖に4つの二重結合を持つ脂肪酸。
- 脂溶性: 脂質に溶けやすく、細胞膜のリン脂質に存在。
生理的役割
アラキドン酸は、細胞膜のリン脂質として存在し、刺激を受けると以下のような生理活性物質の前駆体として働く:
1. エイコサノイドの前駆体
- アラキドン酸は、酵素的経路を通じてエイコサノイドと呼ばれる活性分子に変換される。
- 主な生成物:
- プロスタグランジン(PGs)
- 炎症、発熱、痛みの調節に関与。
- トロンボキサン(TXs)
- 血小板凝集や血管収縮を促進。
- ロイコトリエン(LTs)
- アレルギー反応や炎症に関与。
- プロスタグランジン(PGs)
2. 細胞シグナル伝達
- アラキドン酸は細胞内のシグナル分子として働き、炎症や免疫反応、血管収縮・拡張などの生理的反応を調節する。
生成と代謝経路
1. 生成
- 必須脂肪酸であるリノール酸(ω-6脂肪酸)から体内で合成される。
- 人体では完全に合成できないため、リノール酸を食事から摂取する必要がある。
2. 代謝経路
- ホスホリパーゼA2(PLA2):
- 細胞膜リン脂質からアラキドン酸を遊離させる。
- 代謝酵素:
- シクロオキシゲナーゼ(COX): プロスタグランジンやトロンボキサンを生成。
- リポキシゲナーゼ(LOX): ロイコトリエンを生成。
関連疾患と健康への影響
- 炎症性疾患
- アラキドン酸代謝産物(プロスタグランジン、ロイコトリエン)は炎症やアレルギー反応に関与。
- 炎症性疾患(関節リウマチ、喘息、アトピー性皮膚炎)との関連が指摘されている。
- 血管疾患
- トロンボキサンの生成が過剰になると、血小板凝集や血栓形成が促進され、心血管疾患リスクが増大する。
- 神経機能
- アラキドン酸は、脳内で神経伝達物質や神経成長に関与し、認知機能や神経系の健康に重要である。
アラキドン酸の摂取源
- 食品
- 主に動物性食品に含まれる:
- 肉類(特にレバー)
- 魚介類
- 卵黄
- 主に動物性食品に含まれる:
医療と応用
- 抗炎症薬
- アラキドン酸代謝経路を抑制する薬剤(例:アスピリン、NSAIDs)は、炎症や痛みの治療に利用される。
- 病態治療のターゲット
- アラキドン酸代謝産物(例:プロスタグランジンやロイコトリエン)を標的とした薬剤は、喘息や関節炎の治療に用いられる。
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