薬剤師国家試験出題項目

その他の中枢神経系の疾患

Section その他の中枢神経系の疾患

1 脳炎・髄膜炎

脳炎・髄膜炎の病原体として、ウイルス、細菌、真菌などが多い。脳および脊髄を包む髄膜は、外側から硬膜、くも膜、髄膜からなる。髄膜炎とは、髄膜およびその内側にある髄液における感染症であり、頭痛、発熱、嘔吐、首の硬直などが認められ、脳実質に病変が及ぶとこれらの症状と共に髄膜脳炎をきたすことがある。髄膜脳炎では、けいれん、意識障害などが認められる。

2 多発性硬化症

 中枢神経系の脱髄疾患であり、中枢神経系の髄鞘を構成するオリゴデンドログリアに対する自己免疫反応により炎症が起こり、神経伝達障害が認められる。若年成人で発症することが多く、男性に比べ女性で発症しやすい。

【症状】
 急激な視力低下、複視、筋力低下、しびれ、疼痛、排尿障害、有痛性強直性けいれん など
【検査】
 MRI:大脳白質(特に脳室の周囲)に多巣性病変が認められる
髄液検査:γ–グロブリンの上昇、オリゴグローナルバンド陽性を示す
【治療】
 自己免疫反応を抑制する薬を使用するとともに、症状を緩和させる薬を使用する
急性期:副腎皮質ステロイドパルス療法(無効な場合、血液浄化療法)
再発予防:インターフェロンβ
痙性麻痺:中枢性筋弛緩薬
神経障害性疼痛:プレガバリン
有痛性強直性けいれん:カルバマゼピン
排尿障害(頻尿):抗コリン薬 (排尿困難):α1受容体遮断薬

3 筋萎縮性側索硬化症(ALS)

 中年期から老年期に発症し、女性に比べ男性で多い。有病率は10万人当たり7〜11人である。上位・下位運動ニューロンが両方障害される神経変性疾患である。原因は不明であるが、タンパク質異常凝集説・ミトコンドリア異常説・フリーラジカル説などがある。また、遺伝子異常に伴う家族性ALSが全体の5〜10%の割合で確認されている。

【症状】

 【治療】
 現時点では根本的に治療する方法はなく、栄養管理と対症療法が中心となる。薬物療法では、病態進展の抑制に効果がある抗グルタミン酸薬(リルゾール)が用いられる。

4 ナルコレプシー

ナルコレプシーは、日中の過度な眠気や情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠幻覚を呈する原因不明の疾患であり、睡眠覚醒と関係するオレキシンの減少が関与していると考えられている。日本人における有病率は高く、好発年齢は10歳代〜20歳代前半で特に10歳代で多い。

【症状】

【診断】
 睡眠時ポリグラフ検査、反復睡眠潜時検査が行われる
脳波に異常はなく、脳脊髄液中のオレキシン濃度が低値を示す

【治療】
 規則正しい生活を心掛け、睡眠不足を避けるようにする。睡眠発作に対しては、中枢刺激薬(メチルフェニデート、モダフィニル)を用いる。また、情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠幻覚などのレム睡眠関連症状には、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬を用いる。

5 薬物依存症

薬物依存(症)とは、精神的依存・身体的依存が形成された結果、有害であると知りながら薬物の継続的摂取をやめられない状態のことである。薬物依存やそれを形成する過程では、乱用が認められ、社会的な問題となっている。

【依存と耐性】
 耐性とは、精神作用物質の効果が長期使用のため減弱し、初期と同様の効果を得るためにより大量の薬物摂取が必要となる状態であり、酵素誘導や受容体数の増減などの身体適応反応により起こる。耐性が形成されると、薬物の使用量が増え、依存症患者に精神的・身体的・経済的ダメージを与える。また、薬物の使用量の増加により離脱症状を生じやすくなる。
薬物依存は精神依存と精神依存に分けられる。

 【治療】
 原則、依存を生じた薬物を中止する。退薬症状が強い場合は漸減または別の薬物に置換する。精神症状に対しては、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、炭酸リチウムなどで薬物療法を行う。

6 アルコール依存症 

アルコール依存症とは、アルコールを摂取したいという強い欲望により自己制御が困難となり、仕事や人間関係を犠牲にしてまでもアルコール飲用をはるかに優先するようになった状態である。精神依存や身体依存、耐性が生じ、飲酒行動、精神面、身体面に明らかな変化を認める。

【症状】
 アルコール依存症では、身体依存や低栄養状態により様々な精神症状を呈する。

【治療】
 退薬症状の予防と治療には、アルコールと同様にGABAA受容体の機能を亢進するベンゾジアゼピン系薬抗不安薬を用い、振戦せん妄の精神症状には抗精神病薬を投与する。また、低栄養状態にならないように栄養管理も行う。
アルコール依存症に対する治療として、数ヶ月入院し、個人精神療法、集団精神療法を行い、退院後も自助グループに参加するように心がける。禁酒が困難な場合はアルデヒドデヒドロゲナーゼ阻害薬(嫌酒薬:ジスルフィラム、シアナミド)が用いられる。また、飲酒欲求を抑えるためにグルタミン酸作動性神経活動を抑制するアカンプロサートが用いられる。

 ◇関連問題◇
第98回問152、第98回問187、第100回問62、第100回問246〜247、第104回問190〜191、第105回問62

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